研究課題/領域番号 |
19K02675
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
山田 一美 東京学芸大学, 教育学部, 名誉教授 (80210441)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 発想力・構想力 / 想像力 / 創造性 / 図画工作・美術科 / 自己編集性・相互編集性 / デザイン思考 |
研究実績の概要 |
2020年度は,(1)「主題論」の検討,(2)教科書に提示された発想・構想力の育成方法について教科書研究センター・他での調査,(3)小・中学生の児童・生徒の発想・構想場面の授業ビデオ分析,を行う計画であった。 (1)については,坂本小九郎の論文「イメージ体験の座標系を形成する表現」,及び新井哲夫の著書第3章「心象表現としての描画の創作過程と表現意図」の主張・論点を発想・構想の観点から整理した。その結果,坂本理論では「新しい次元の主題や意味」が焦点に,新井の成果では,松原郁二の「A-R型創造」が検討されていた。山田はそれを再度整理し口頭発表(2020)及び,「松原郁二の『A-R型創造』理論と発想・構想論」を研究ノート(日本美術教育研究論集, No.54,2021)に,デザイン思考の視点から論文を発表した(『民具・民芸からデザインの未来まで 教育の視点から』,2020)。 (2)では,検定教科書『図画工作6』(1979)と『同』(1996)の間で,発想・構想に対するジャンル別の見方・考え方の変化と,ジャンル別の個別的制作工程の原理から汎用的な発想・構想の原理への変化を捉えた。(山田一美・ほか「図画工作科における汎用的資質・能力の検討-教科書題材に見る能力観の変化-」2020) (3)の授業ビデオ分析では,自己編集・相互編集による発想・構想力の実際の行為・発話等を抽出・再解釈した。授業「自分いろ…」では,グループ活動を通して,色紙を手で操作することで多様なアイデアが浮かび,創発的に発想・構想していく過程が明らかとなった。授業「抽象的な…」では,生徒自身の日常の生活経験をもとに発想・構想していく姿が捉えられた。授業「コップ…」では製作途中での発表・紹介が契機となり新しいアイデアが出る様子が捉えられた。(3)の成果は今後,論文・口頭発表等で発表する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の課題(1)(2)(3)の整理は,概ね順調である。成果公表も,以下の実績を得ている。 山田一美「松原郁二の「A-R型創造」理論と発想・構想論」日本美術教育研究論集,No.54,2021.pp.177-182.山田一美「松原郁二の「A-R型創造」理論と発想・構想論」第54回日本美術教育研究発表会(口頭発表),2020.山田一美「普通教育におけるデザイン思考の視座としての総合的な見方」,『民具・民芸からデザインの未来まで-教育の視点から』,企画監修・宮脇理,学術研究出版,2020,pp.133-143.山田一美・ほか「図画工作科における汎用的資質・能力の検討-教科書題材に見る能力観の変化-」東京学芸大学紀要芸術・スポーツ科学系第72集,51-75. (2020) ただ,その他の成果発表が新型コロナの状況などから遅れているため,本年度中に発表ができるよう計画している。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の計画では,自己編集性と相互編集性の観点から,これまでの研究成果をまとめ,学会等で発表していくことである。 ただし,上記に加え,2020年度において,坂本小九郎の論文「イメージ体験の座標系を形成する表現」の考察成果,及び授業ビデオ分析による自己編集・相互編集に関する分析・考察の成果については未発表のため,最終年度として,未発表成果について公表できるようスケジュール調整中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に,新型コロナの影響をもとに,美術科教育学会研究発表(愛媛大会),大学美術教育学会研究発表(宇都宮大学),InSEA(国際芸術教育学会)での口頭発表のための旅費,及び投稿論文にかかる掲載費用等の支出が計画どおり,進めることができなかったこと。最終年度である2021年度に,未論文を発行するとともに,可能な限り,前述の学会等に参加して口頭発表または,論文投稿を試みる。
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