本研究は,児童・生徒が発揮すべき発想・構想力の要素と枠組みを再検討・ 提案することを目的とした。 2019年度の課題(1)では学習指導要領の指導資料・教科書等におけるその系譜(4段階区分)を,課題(2)では現代社会における発想・構想論を,課題(3)では発想・構想力に関する分析/総合(統合)論,循環論等を整理した。 2020年度の課題(4)では松原郁二の「A-R型創造」理論,及び阿部公正のデザイン思考論を検討・整理した。課題(5)では教科書研究センターでの調査から,題材の発想・構想の能力観の変化を分析した。課題(6)の自己編集・相互編集による実際の活動・発話等の分析については,新型コロナウィルスの影響を踏まえ2021年度に持ち越した。 2021年度の課題(6)では発想・構想力の実際の行為・発話等を分析するため,既刊報告書(Next-Generation Education)に収録の図画工作,美術の授業を資料源とし,発想・構想力の観点から発話や行為を抽出・再解釈した。その結論,児童は発想・構想のプラットフォームを足場にそのイメージやアイデアを再編集(キュレート)し,別次元の創造活動のフェーズに展開していたことがわかった。 2022年度は,「総合(探究)」の学習過程を援用して,教科書「図画工作5・6上」の「探究」と思考ツールの特徴を分析した(課題7)。同時に,発想・構想の概念的枠組みを検討した。その結果,図画工作の特徴は,「総合(探究)」と同様の4つ学習過程をもつこと,及び同時性をもつことがわかった。とくに,身体・思考・感情を伴ってアイデアや材料などを「組み合わせる」という造形法の中で4つの思考過程がはたらいていることがわかった。このことから,結論として,これらの造形思考法の総体が発想・構想の自己編集,相互編集の特性であり,その概念的枠組みを形成していると解釈した。
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