研究課題/領域番号 |
19K02676
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
池田 敏和 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (70212777)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 革命的な知識の成長 / 累積的知識の成長な |
研究実績の概要 |
1年目は、数学的知識の累積的な成長と革命的な成長といった視点から先行研究を分析し、研究の論点を明確化することを目的とした。特に、RMEの「model of」から「model for」への移行に焦点を当て、その特徴が、モデルの適用範囲を広げ、より洗練された数学的推論を導いていく過程にあること、それゆえに、その移行は累積的な知識の成長の基盤となる指導系列として捉えられることを確認した。しかし、このような累積的な知識の成長は、子供の理解を漸次深めていく上で有効な考えであるが、ラカトシュ(佐々木訳,1980)の述べるところの 「概念の境界領域の研究」「その概念の拡張」「前には識別されていなかった概念の識別」に対応する革命的な知識の成長が組み込まれていない点を確認した。ここでいう革命的な知識の成長とは、モデルが適用できる範囲を拡げていく活動を推し進める中で、モデルが適用できない場面に遭遇し、見方や発想を変えることでそれを克服して新たなモデルを創り上げていく過程といえる。革命的な知識の成長に焦点を当てることは、未来が見えない今後の社会において必要とされる汎用的な能力の育成といった視点から欠かせない論点であり、理解を促す指導だけでは獲得が難しい、汎用的能力に関わる方法知にも関連してくることを考察した。それゆえ、算数・数学の学習指導において、革命的な知識の獲得を促す指導内容を特定すると共に、その内容に関わる子供の知識の成長を具体的にどのように解釈していくかを今後取り組むべき論点として設定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
過去の文献をレビューしながら、研究の主題を明確化することはできたが、算数・数学の具体的な指導内容において、革命的な知識の成長の様相を分析・考察できていない。次年度は、具体的な内容を例示しながら、革命的な知識の成長の様相について教材研究を進めていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
革命的な知識の成長の様相を探る際、累積的な知識の成長を対比しながら考えることが一つの方法になる。そして、累積的な知識の成長におけるモデルの適用範囲を広げる活動に焦点を当てると、革命的な知識の成長では、モデルが適用できない対象が見え隠れする場面がその契機として捉えることができる。次年度においては、数の領域に焦点を当て、有理数で表現できる量から有理数で表現できるかどうかが曖昧な量へと対象を広げていく活動を教材として取り上げ、その中で革命的な知識の成長の様相を分析していくことにする。複数の表現様式を活用すると共に、その表現間の行き来に目を向けていくことにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品が当初想定していたよりも安価に購入できたため、262円の差が生じた。 次年度は、262円を文房具の購入に充てる予定である。
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