本研究の目的は、プログラミング経験を全く持たない教員が、児童・生徒に「手順的な自動処理」の考え方を教授しトレーニングさせるためのソフトウェアを提供することにある。 研究代表者が行った過去の挑戦的萌芽研究、基盤研究(C)では、学生2人のペアが、相手の記述した手順指示書通りに作業し、その結果を見て自分の指示の不備を認識し、指示書を修正する活動を繰り返す方式を採用していた。この方式のペアの一方をソフトウェアに置き換えることにより、常に一定の基準に従い、かつ的確に指示書の不備を具現化した結果を返すソフトウェアを、いつでも提供できるようにしようとするものである。 過去の研究で作成したシステムは、学習者に自然言語による記述を入力してもらい、これを解析するようなものであった。しかし残念ながら、小学生を対象とした場合にキーボードによる入力はハードルが高いこと、音声入力も教室内の雑音の多さから適切でないこと等の理由により、この方式は一時保留とした。その替わり、小学生にとってハードルの低い、ブロック組み立て型の言語を開発することにした。令和3年度は、タブレット型端末向けに、作業の多くがメニュー選択方式となるようにシステムを改良した。その際、プログラミング言語風のifやwhileに相当する構文を選ばせる方式ではなく、比較的自然な日本語文ブロック(テンプレート)を用意し、その組み合わせとパラメータ設定(数値や方向、角度などの穴埋め)によって文章構成を行う形とした。加えて、そうして作られた指示を解釈実行するインタープリタを作成した。 令和3年度夏以降に、協校において使用する予定で打ち合わせ等を進めていたが、新型コロナ感染症拡大のために最終的に断られ、実際に小学校教育の場で実施することができなかった。替わりに、知り合いの小学生に試用してもらうことによる事例を得るにとどまった。
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