研究課題/領域番号 |
19K02681
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
石井 俊行 奈良教育大学, 理科教育講座, 教授 (50636446)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 推論スキーマ / 比例 / 一定 / 気体の発生 / 学習の転移 / 類似 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は小・中学校間における理科学習における円滑な接続のための学習支援システムを構築することにある.このため「押さえておくべき基礎技能」を特定することは重要である.理科では,「CaCO3とHClでCO2を発生させる」の事例のように,「比例し途中から一定になるグラフ」がある.このようなグラフは数学ではあまり扱わず,理科独特なグラフとも言える.このグラフに関する問題を解決するためには,生成物の生成の過程とともに,グラフから生成に関与する物質A,物質Bそれぞれの過不足の状況を判断して必要な物質A,物質Bについて考えなくてはならない.そのため,類似した数学問題「ココアの粉と牛乳でココアを作成する」をあらかじめ先行して解かせることの効果を検証し,「比例し途中から一定になるグラフ」の理科問題を解決させるための学習支援の指導法について検討した.その結果,理科テストの各問いにおいて正答した生徒数が,数学テストを先に理科テストを後に実施したクラスの方が理科テストを先に数学テストを後に実施したクラスに比べて有意に多いことが明らかになった.このことは,意図的な指導でないにもかかわらず,先行して数学テストを解かせることで正の学習の転移が生じ,理科問題を解決する能力が高まったものと考える.このことは,やみくもに「CaCO3とHClでCO2を発生させる」反応での「比例し途中から一定になるグラフ」の説明を生徒に行ったとしても,CaCO3の量,HClの量,及びCO2の発生量に関する適切な場面の認識ができるわけではない.その支援として,教師は理科問題を解決させるための多くの類似した身近な事例を持ち合わせ,それを児童・生徒に適宜うまく提示できるようになることが重要であると考える.それには,教師は常に問題意識をもって,その支援の方法を確立していく必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
・地層に関してのつまずきの調査分析で,地層の成り立ちがうまく把握できない要因が明らかになった.それを論文にして日本科学教育学会紀要「科学教育研究」に投稿したところリジェクトとなり,さらに再調査をすべきかを現在検討をしている. ・オームの法則に関してのつまずきの調査分析では,グループごとの人数の偏りが激しなってしまい,分析が難しい状況にある.要因として,特に中位,下位問題のステップの大きさの設定をもう少し細かくすべきだったと考えられる.このステップの大きさによって,つまずきがうまくあぶり出すことができないことがある.
コロナ禍で再調査が難しい状況にあり,今後の研究の進展がどうなるか未定の部分もある.
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今後の研究の推進方策 |
・月の満ち欠けに関してのつまずきの調査は,昨年度の2月に実施させていただいた.今後はその分析を進めていきたいと考えている. ・小学4年の「ものの温度と体積」の単元において,スタラーによる発泡スチロール球の動きを通して,児童は熱膨張を小さな粒の熱運動として捉えることが可能なのかを検証したいと考えている.
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