研究課題/領域番号 |
19K02681
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
石井 俊行 奈良教育大学, 理科教育講座, 教授 (50636446)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 月の満ち欠け / 地層の重なり / 物質の密度 |
研究実績の概要 |
本研究は、理科教育において、小・中学校の両方で学習し、かつ中学生がつまずきやすい「月の満ち欠け」「地層の重なり」「密度」の単元について、「押さえておくべき基礎技能」を特定することを目的に行った。 その結果、次のことが明らかになった。 (1)「月の満ち欠け」に関しては、「月の公転周期とその公転方向を指摘できる能力」,「太陽の位置から観察者の時刻を推定できる能力」「地球の自転に合わせて観察者を含む地平線(左手が東,中央が南,右手が西)を回転させられる能力」が重要であることが浮き彫りとなった.これらの点を地球の北極の上空から太陽,地球,月を俯瞰した視点で「月の満ち欠け」の現象を捉えられるようにすれば,中学生は「月の満ち欠け」を理解することができる. (2)「地層の重なり」に関しては、特に「地形図を読み取る力」,「標高を加味し,他地点の地層(火山灰層)を対比して地層の重なりを推定する力」が重要であることが浮き彫りとなった.これらの解決には,社会科の学習内容も加味した「カリキュラム・マネジメント」の視点で総合的に学習指導を行っていくことが重要である.そのことで地層の広がり方の規則性を見出すことができるようになる。 (3)「密度」に関しては、小学5年算数「単位量当たりの大きさ」の学習は,中学理科における物質の密度の学習のレディネスになっていることが明らかになった.しかし,5割程度の児童しか「1に当たる大きさ」を求める式やその式の商の意味について理解できていなかった.これらの改善の指導を十分に行うことで,中学理科における物質の密度の理解がさらに促進するものと考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全国学力・学習状況調査「算数A」の「単位量当たりの大きさ」(「1に当たる大きさ」,及び混み具合を含む)問題と中学理科における物質の密度問題の正誤を比較し,小学5年算数「単位量当たりの大きさ」の学習は,中学理科における物質の密度の学習のレディネスになっていることが判明されたため、その報告を日本科学教育学会研究紀要に投稿し、学術雑誌「科学教育研究」に掲載された。 また、「月の満ち欠け」「地層の重なり」に関する報告として、「「月の満ち欠け」におけるつまずきの要因分析と指導法の検討~中学生の理解を促進させるために~」「中学理科「地層の重なり」におけるつまずきの要因分析~中学生の理解を深めさせるために~」を現在日本科学教育学会研究紀要に投稿し、審査待ちである。 現在は、「単位当たり量の大きさ」と「速さ」「密度」「圧力」がどのように関わっているのかの調査は終了し、分析を行っている。また、単元間とのつながりをうまく連携させることで児童が深い理解に至らせる可能性が高いと考え、現在小学4年の「ものの温度と体積」と「ものの温まり方」の2つの単元に注目し、調査を実施している。
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今後の研究の推進方策 |
理科では小・中学校間の接続が円滑ではない状況で、中学生になった途端に内容を難しいと感じる生徒が多い。本研究では、理科教育において小・中学校の両方で学習し、かつ中学生がつまずきやすい「密度」「濃度」「月」「電気」「速さ」の単元について、(1)特に関連の深い小学校での理科と算数の基礎技能は何なのか、(2)なぜその単元を生徒は難しいと感じるのかを、実験データをもとに分析し、「押さえておくべき基礎技能」を特定することを目的に行ってきた。その方法として「3段階つまずき特定法」ですべて調べられると当初は考えていたが、この方法とともに、単元間を繋げるような取組、あるいは、単元同士の関連を深めた取組と、研究の方向性に幅をもたせていく必要があることが研究を進めていくうちに判明した。 「電気」に関しては「磁界」に対象を変えて研究を進めている。また、「速さ」に関しても研究を進めていかなくてはならず、その準備を現在進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
進捗が遅れているため16000円程度予算が余りましたが、必要な物品などは次年度にまとめて使用します。
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