研究課題/領域番号 |
19K02682
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
槇原 茂 島根大学, 学術研究院教育学系, 特任教授 (00209412)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 歴史教科書 / 市民革命 / ブルジョワ革命 / シティズン / イギリス / フランス / 近代 |
研究実績の概要 |
2021年度は、英仏の教科書の記述内容を検討した。イギリスに関しては、3つの出版社の歴史教科書(前期中等教育)を参照した。ナショナル・カリキュラムの方針に従っていると考えられるが、共通する特徴として、史実を教えることより、史実を通して思考力や洞察力を培い、意見を的確に説明・表現する力を養うことが重視されている。いずれにおいても、日本で「ピューリタン[清教徒]革命」と呼ばれる一連の出来事は、「内戦 the Civil war」として主要単元の一つとされている。他国の革命も視野に入れた「市民革命」に相当する包括的概念・術語は使われておらず、名誉革命も含め、国家の統治権が国王から議会へと移されていくプロセスが多角的に辿られている。 フランスの歴史教科書(前期中等教育)では、国の教育課程基準(プログラム)に則して、フランス革命は主要テーマの一つに位置づけられているが、イギリス同様、「市民革命」に相当する概念は見いだせない。他方で、いわゆる[環]大西洋革命と関連づけられている点が注目される。該当学年の教科書の特定や入手に手間取ったが、引き続き記述の分析を進める予定である。 また、並行して進めてきた日本の「市民革命」論や学習指導要領(社会科、地理歴史)の検証から、興味深い事実が明らかになった。1970年代後半以降、日本の歴史学において「市民革命」の術語を用いた研究はほとんど見られなくなった一方で、中学校社会科の学習指導要領では、1980年代以降の度重なる改定を経てなおも同概念が用いられ続けた。 2022年度は、これらの考察結果を、学会報告と論文を通して発表し、ひとまず本研究を締め括りたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021度も引き続き新型コロナ感染症対策がおこなわれ、研究活動も制約されたことにより、前年度の研究計画の遅れを十分には挽回できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
歴史学の動向と学習指導要領「社会科」の記述のギャップなど、「市民革命」概念・用語の孕む問題点を指摘し、英仏歴史教科書の記述を参考にしつつ、新たな定義や用法の可能性についても検討する。その結果を、学会や雑誌論文を通して発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症対策の影響で学会活動が制約され、旅費を節約した分を最終年度に回すことにした。また、新たにフランスの文献を入手する必要が生じたため。
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