研究課題/領域番号 |
19K02685
|
研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
菊地 章 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 特命教授 (20127822)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 情報教育 / プログラミング的思考 / 計測・制御 / ネットワーク / 学校教育 / 情報機器変遷 / 学習過程 |
研究実績の概要 |
我が国の学校教育においては,現在全教科的な視点から問題解決能力の育成が展開されつつある。このとき,これまでの各教科独自の考え方のみでなく教科横断的な考え方も導入され,特に情報教育においては総合的な学習展開が望まれるようになっている。小学校の情報教育ではプログラミング的思考に基づいた全教科での問題解決能力の育成が行われるようになり,中学校の情報教育ではこれまでの計測・制御のプログラミングに加えてネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミングも行われるようになり,高等学校では従来の情報A,B,Cが社会と情報ならびに情報の科学に替わり現在では情報Ⅰ,Ⅱとして発展している。このように小学校,中学校,高等学校における情報教育は関連を持ちながら発展しつつあるのが現状である。 一方,情報教育の中で重要となる情報機器は紀元前から現在まで急速な発展を遂げており,その構成機構の高度化に追従することが学習者にとって難しくなっている。そのため,紀元前からの情報機器変遷の本質的な流れを,情報の表示,情報の記録,数値の計算や情報の処理,計算する道具,機械的な構成,電子的な構成,情報の利用から捉え,各々の視点からの情報機器の変遷を考察し,機器が変わっても機能は変わらずに進展していることを整理した。 学校教育での情報教育の本質については,学習の過程を外部情報の収集,記憶・理解・判断,創造,学習成果の表出の4つの段階に分け,教育・学習の視点から学校教育における教科の特性について考察し,情報教育の他教科と異なる特性を客観的に説明した。さらに,情報教育の本質を,情報の処理としての学習,情報の収集・利用としての学習,情報の収集→判断→学習成果の表出としての学習,情報の表出→収集→判断としての学習の4パターンに類別し,情報教育カリキュラム体系の基本的な考え方を構成した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は,情報機器変遷の本質を小学校から高等学校までの情報教育体系に取り込む内容と小・中・高等学校一貫問題解決型情報教育カリキュラムの構築の内容を含んでいる。2019年度はドイツの暗号機ENIGMAならびにENIGMA暗号を解読するためのイギリスのブレッチリー・パークにあるColossus等を調査することができたが,2020年度は新型コロナウイルスの影響で海外等での調査を行うことができず,情報機器変遷の本質を情報教育に取り込む研究が若干停滞している。後半の小・中・高等学校一貫問題解決型情報教育カリキュラムの構築については予定通り順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では,考え方の中核となる情報機器変遷の本質を小学校から高等学校までの情報教育体系に取り込む内容と小・中・高等学校一貫問題解決型情報教育カリキュラムの構築の内容について,今後は次のように研究を進める予定である。 (1) 情報機器変遷の本質を小学校から高等学校までの情報教育体系に取り込む内容については,次のカテゴリの観点から紀元前からの計算機器変遷に関わる国内外の情報機器変遷の調査をさらに進める。 (a)情報の表示についての変遷,(b)情報の記録についての変遷,(c)数値の計算や情報の処理についての変遷,(d)計算する道具についての変遷,(e)機械的な構成としての変遷,(f)電子的な構成としての変遷,(g)情報の利用としての変遷 (2)小・中・高等学校一貫問題解決型情報教育カリキュラムの構築の内容については,次の観点から小・中・高等学校での普遍的な学習過程を考慮した総合的な問題解決学習としての情報教育カリキュラムの構築を進める。 (a)外部情報の収集,記憶・理解・判断,創造,学習成果の表出の4つの段階に分けた学習の過程を基礎とした情報教育体系の構築,(b)教育・学習の視点からの教科の特性に応じた情報教育体系の構築
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの世界的な広がりで海外等での調査ができず,当該年度は小中高一貫問題解決型情報教育カリキュラムの理論的な考察のみに終わった。そのため,海外出張費を繰越す必要に迫られた。次年度は海外等での情報機器変遷調査等を含み,引き続き研究を進める予定である。
|