研究課題/領域番号 |
19K02687
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
本村 猛能 日本工業大学, 共通教育学群, 教授 (70239581)
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研究分担者 |
森山 潤 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (40303482)
工藤 雄司 茨城大学, 教育学部, 教授 (70635614)
角 和博 佐賀大学, 教育学部, 教授 (80145177)
山本 利一 埼玉大学, 教育学部, 教授 (80334142)
岳野 公人 滋賀大学, 教育学部, 教授 (70313632)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 情報教育 / 体系化 / カリキュラム / 学習指導要領 / プログラミング / 探究心 / 思考過程 / 創造的態度 |
研究実績の概要 |
本研究は、継続研究している日本と類似の文化圏の調査から『中学・高校の体系的な情報教育は生徒の情報の科学的理解に関する内容が充実する』という先行研究結果を踏まえ、文化圏の異なる西洋・米国も加えた比較調査により、我が国の情報教育カリキュラムの構築の方向性を検討し、各学校段階の系統的な教材提案と実践を行い、体系化を検討することを目的としている。 令和元年度・2年・3年度は、調査国の検討・依頼・調査を可能な範囲で実施し、小学校・中学校の情報教育の実践を国内外に発表しカリキュラム体系化を検討することにあった。本年度の研究結果は以下の通りである。 まず調査は、アジア諸国では継続してインドネシアを選定、異なる文化圏で前年度は西洋のスロベニアを実施しているので調査を予定していた米国(ミネソタ州)を選定し、最終年度での調査が望ましいとして実施予定であった。しかし、新型コロナウイルスの影響で我が国を含め渡航禁止となり,世界的な学校現場の休校のため、選定依頼後の変更等の調査は今後の予定である。ただし、2015年以降の現指導要領上の調査をインドネシアとアメリカ(カンザス州)の調査を実施している。また実践では、これまでに実践と提案を小学校では本格的に,中学・高校では試行的に行った。 その結果、小学校低・中・高学年いずれも情報教育の実施には、児童の発達段階に応じた「各教科の目標に応じた内容」と「プログラミングの思考過程が探究心を高める」「プログラミングの思考過程が創造的態度の柔軟性・分析性・想像性・協調性を高める」,中学校では「知識・技能と思考・判断力の評価の2観点の意識が高まる」という効果があることが明らかになり,この実践内容の成果を国内外に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は、研究実績の概要のように、新学習指導要領での調査国の国際比較検討と研究成果を踏まえた情報教育の実践を国内外に発表することであった。 この令和3年度の結果は、まず調査国である新学習指導要領に沿った中・高校の情報教育の調査であり、アジア諸国では我が国のカリキュラム内容を踏まえた国際比較のため以前調査した国が望ましいと考えインドネシアを選定した。一方、異なる文化圏で前年度は西洋を実施しているので米国を調査するよう検討した。これらの国の実施は最終学年での調査が望ましいと考え、2~3月に実施予定であった。しかし、新型コロナウイルスの影響で世界的な学校現場のオンライン授業や休校措置がとられていた。そのため、新たな調査は次年度(令和4年度)に持ち越されることとなった。 次に情報教育の実践であるが、前年度まで、実践提案は小・中学校で行った。また、本年度は中学校での情報教育(制御とプログラム)の実践を行った。この実践は、先に小学校低・中・高学年で実施しているので、中学生を対象とした情報の技術分野を中心とした主に評価の3つの柱を踏まえた情報教育の制御とプログラミング教育を実施した。この結果は、情報教育としての「知識及び技能」と「思考力・判断力・表現力」の各評価項目については有意差があるが,「学びに向かう力・人間性」については有意差が認められなかった。これは技術科の中の時間数や小学校からのプログラミング教育がまだであり,「体系的な情報教育」の必要性があることが明らかになっている。 今後の実践提案と内容については、新型コロナウイルスの影響がなければ,従来から依頼している我が国とインドネシアや米国の調査を実施することを検討し,小・中・高校の提案と実践を行う予定である。 このように、次年度に向けての中学・高校への実践と提案は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、コロナ渦の中、国際比較調査の依頼、これを踏まえた小・中・高校の実践提案と小学校での実践と中学・高校への体系化を検討した。具体的には、我が国の複数県の中学校と高等学校を調査し,インドネシアと米国(ミネソタ州またはミシガン州など)の調査を依頼した。令和4年度は、昨年度の小学校・中学校における実践の成果と、研究協力者である小熊良一氏(群馬大学)を中心に,今後児童生徒数について,これまでの倍以上に増加するものと予想される中学・高校の特別支援教育を含むインクルーシブ教育と併せた,小・中・高校での情報教育を踏まえた提案及び実践を行う予定である。そのため本年令和4年度は、 1.令和3年度の研究成果の整理と新学習指導要領による情報教育の在り方を検討、 2.渡航可能ならインドネシア・米国の情報教育の比較調査を実施、 3.1と2を踏まえた中学・高校への実践を行い、提案と成果を国内外で発表、 の3項目を主とする研究を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度の残金(1,411,091円)は研究代表者(本村)と研究分担者(森山・山本・角・岳野・工藤)6名の費用である。この残金が生じた理由としては、代表者が2018年4月に大動脈解離という病気になり、研究代表者である本村は,海外渡航は新型コロナの副作用の症状が影響する恐れもあり、暫く控えた方が良いとの主治医の判断により、国際学会を取りやめ国内学会に絞ったこと。さらには、新型コロナウイルス感染症により研究分担者や研究協力者の渡航自体も不可能になり、学会や研究会等は全てオンライン発表になり、旅費として検討していた費用が保留になったことである。 しかしながら,国内学会や国際学会(具体的には台湾・オーストラリア)では可能な限り誌上発表やオンライン発表を行ったが、現地での対面発表や調査等の打ち合わせは出来なかった。そこで令和4年度は渡航の可能性を期待し、国際学会や極力現地での調査のための費用を主とした繰り越しを考えたため、差額が生じた。 令和4年度は、・国際的な研究者の打ち合わせや,国内・国際学会発表、・調査アンケートの統計ソフト費、・国内学会の費用、・調査に基づく中学・高校での実践のための教材費、・調査データの整理等の5点を中心に進めていきたい。
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備考 |
日本工業大学のホームページにある「LCセンター図書館」の研究報告のサイトに、タイトル「工業・技術教育における教育原理を活用した実践-工業科・技術科教育の情報教育を通して-」が掲載されている。
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