研究実績の概要 |
幼小接続期の教育において,双方の違いについて十分理解・意識していないという調査結果から,算数では「幼小接続期で育てたい数学的見方・考え方とは」という問いに対して,就学前の5歳児を対象とした「小学0学年」を創造し,教科書的な図書「小学校0年生の算数」の開発が必要と考えた。まず,「源数学の理論」に基づき,「17の源数学と着目点」と「11の源数学と考え方」に整理し,5歳児を対象とした「子どもの外的活動・思考活動」と「メタ認知的な思考表出の例」を明らかにした上で,子どもが無意識に遊びつつも,教師が意図的に働きかけることができる教科書的な図書「小学校0年生の算数」という方向性を見出した。また,オーストラリア全土の5歳児を対象としたPrepの視察では,20までの数や図形の仲間分け等の各項目に,内容,キーになる考え方,事前・事後評価,評価,観察の視点,子どもの記録,リソースを明確にした「算数の授業プラン」を入手し分析し,遊びなどの体験的な活動を通した算数の授業を見学し考察した。その結果,全ての5歳児を対象に,教師が意図的に園での生活の中から源数学を利用できるカリキュラムを開発し,「子どもの無意識的かつ体験的な活動」と「教師の意図的な働きかけ」を保障する教科書的な図書「小学校0年生の算数」を作成と,それらが活用できる場や時間を保障することを通して,子どもが物事を数学的な見方で捉え,そのことを日常生活でも繰り返し体験し,数学的見方を働かせ,遊びをより豊かにしようとする子どもを育てることが,小学校1年生以降の算数科での学習へつながると考えた。【成果物】①「Prepの現地視察による現状と可能性」東海学園大学研究紀要 第25号 人文科学研究編 2020年3月発行 ②「幼小接続期における源数学の理論に基づく教科書的な図書「小学校0年生の算数」の開発Ⅰ」大阪成蹊大学紀要 第6号 2020年3月発行
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
〇「源数学の理論」に基づき、,17の源数学と着目点(見方を含む)と,11の源数学と考え方に整理し,それぞれについて,5歳児を対象とした「子どもの外的活動・思考活動」と「メタ認知的な思考表出の例」を明らかにした。 〇オーストラリア全土の5歳児を対象とした小学校準備学級「Prep(Preparatory Year)」制度についての視察と算数のカリキュラムの考察を通して,算数科の素地について,活動を通して体系的に体験させている点が特徴的であることが分かった。 〇教科書的な図書「小学校0年生の算数」の一例として,タングラム絵本を試作した。 〇研究計画にはなかったが,日数教春季研究大会「創成型課題研究」にエントリーし,「幼小接続期における源数学の理論に基づく教科書的な図書「小学0年生の算数」の開発にむけた基礎研究Ⅰ」と題して,「源数学から見た幼小接続期で育てたい数学的見方・考え方」「源数学育成の観点から見たPrep Transition」「「小学校0年生の算数」の開発にむけた基礎研究」の3つの論文を投稿中である。また,日数教第102回全国算数・数学教育研究(茨城)大会では,幼稚園教育分科会で,「源数学の理論に基づく小学校0年生の算数の創造-オーストラリア就学前準備教育Prepからのアプローチ-」と題して、発表準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
〇前期の目標・計画として,教科書的な図書「小学校0年生の算数」の作成に向けて,実践研究協力者向けの「総論(総説)」,幼小接続期の算数のカリキュラムに値する「系統表」,それらに基づいた教科書的な図書「小学校0年生の算数」の試作原稿の完成とする。 〇夏季の日数教第102回全国算数・数学教育研究(茨城)大会の提案を通して,保育・教育関係者からの意見を取り入れ,今後の研究の発展につなげる。 〇後期の目標・計画として,教科書的な図書「小学校0年生の算数」を使った教育実践に向けて,実践協力校との打ち合わせ,8回の教育実践とデータの抽出,実践結果のデータ収集と分析,改善作業に取り組む。 〇3年目の研究の準備として,日数教第103回全国算数・数学教育研究大会の発表準備,共同研究者所属大学合同フォーラムの実施計画作成を行う。 〇新型コロナウイルスの感染拡大に対応するため研究協力園での実践が困難な場合,3年目に実践を組み込むか,科研計画を1年延長するなどの特別な措置を必要とする。
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