研究課題/領域番号 |
19K02694
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研究機関 | 奈良学園大学 |
研究代表者 |
松井 典夫 奈良学園大学, 人間教育学部, 教授 (10736812)
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研究分担者 |
岡村 季光 奈良学園大学, 人間教育学部, 准教授 (00750770)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 防災教育 / 東日本大震災 / 津波事故 / 学校・教師の役割 / 教訓 |
研究実績の概要 |
本研究の学術的背景、研究課題の核心をなす学術的「問い」として、 「地震や台風による災害は、これまで幾度となく経験し、そのたびに教訓を生かそうとしてきたはずである。それでも災禍のたびに新たな取組や研究が繰り返され、教訓が系統的に生かされてこなかった」 ということを挙げている。 2011年に発生した東日本大震災では、教師による避難の方法や決断が子供の命の直結することが明確となった。しかし、現在においては働き方改革や多忙感の増大によるによる教師の働き方、意識の変容が、学校における安全教育(防災教育)の推進の障壁となっている。そこで本研究課題に沿って、石巻市立大川小学校を訪問し、インタビュー等を実施した。大川小学校(2018年閉校)では、児童74名と教職員10名が津波に襲われて命を失った。この悲劇では、教師たちは地震発生後およそ50分間、児童を校庭にとどまらせ、三次避難先の決定を下すことができなかった。この事故は訴訟に発展したが、その決定では、学校や教師はハザードマップにおける「想定」外であっても、その災害を予見する力量が必要であることが明確に示された。したがって、防災教育の推進や地域との交流などは、教師が果たさなければならない役割であることが今回の調査で示唆された。また、被災者、学校、行政が手を携えて防災教育に取り組むことについて、被災者はある意味で災害や事件、事故に対して結果的に多くの知見を有する。その「教訓」をこれからの子どもの命に結びつく防災教育や学校安全の構築に有効に活用されることが望まれるが、そこで遺族感情や事件、事故、災害の因果関係などの模索が優先され、教訓が生かされず、「遺構」などの物質的なものが残されるにとどまる場合が多い。本研究ではその障壁に対してチャレンジし、有効な安全教育(防災教育)を構築していくことを改めて再認識した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、「達成されるべき包括的な学校安全」として、A-安全教育、B-安全管理、C-組織活動、D-道徳教育、E-健康管理の5つのターゲットを想定し、研究を推進しているところである。A-安全教育、B-安全管理、C-組織活動における「有効性」と「持続性」においては、今回の大川小学校調査を始め、研究を推進することができた。しかし、D-道徳教育、E-健康管理においては国内の知見のみならず、とくに海外の動向を視察し、その「有効性」と「持続性」の研究を推進する予定だったが、COVID-19によって視察調査が実施されず、進捗できていないのが実態である。
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今後の研究の推進方策 |
COVUD-19による海外渡航規制も緩和されていく見通しである。そこで今年度(最終年度)については、D-道徳教育における「いじめ」「自殺」「犯罪」「生命」について、海外の実践や考え方を実地調査し、有効な知見を得たい。また、「教訓」がどのように生かされ、現在の学校安全に生かされているかという点について、「戦争」というものと道徳性の関連に着目する必要が、昨今の世界情勢において示唆されているところである。そこでカンボジアの内戦「クメールルージュ」とその後の学校教育、国民の道徳性について調査を実施することは、「有効性」と「持続性」において多くの知見が得られることが想定される。E-健康管理については、折りしもCOVID-19の感染拡大において、各国の対応が多様化した。とくに初期(2020年当初)の台湾におけるCOVID-19への対応について、学校における児童生徒の健康管理という側面において意義のある示唆が得られることが予想される。 今後においてはこれら海外調査を実施し、「包括的な学校安全」における「有効性」と「持続性」の結論へと、本研究を導いていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度はCOVID-19による影響で、当初計画していた国内外の研究調査のほとんどを実施することができなかった。そこで本研究課題は1年間の延長が認められた。 今後については、本研究を推進し、結論を導くために国内外の研究調査を実施するため、次年度使用額を活用する予定である。
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