研究課題/領域番号 |
19K02694
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研究機関 | 奈良学園大学 |
研究代表者 |
松井 典夫 奈良学園大学, 人間教育学部, 教授 (10736812)
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研究分担者 |
岡村 季光 奈良学園大学, 人間教育学部, 准教授 (00750770)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 防犯 / 反脆弱性 / インタビュー / カンボジア / 窃盗被害 / 安全教育 |
研究実績の概要 |
2022年度は、カンボジアにおけるCMU(Cambodia Mekong Universityの学生、小学生、市民(集落等)にインタビューを実施し、「危機に対する反脆弱性」についての調査を実施した。そして本研究課題である「有効性」と「持続性」をもつ包括的な学校安全プログラムの開発に活用することにした。調査計画を行ったカンボジアでは、窃盗被害は日常的に起こっており、それぞれの市民が自身で危険回避する必要性が高い国であるといえる。以前の調査で、カンボジア・メコン大学の学生が窃盗被害に遭った時の状況について話してくれた。そこでは「被害にあって以来、夜8時以降は出歩かないようにしている」「男性よりも、女性は狙われやすいから気をつけないといけない」などの言葉が聞かれた。カンボジアにおいては、「安全」に対する脆弱性が危機に対する「反脆弱性」を作り出している可能性がある。そこで今回の視察では、CMUの学生、小学生、市民(集落等)にインタビューを実施し、「危機に対する反脆弱性」についての調査を実施した。なお、今回の調査内容はニュアンスが複雑で理解が困難な場面も多かったので、カンボジアメコン大学の学生等にも協力を依頼し、通訳をしながら実施した。1件1件の調査には多大な時間を要したため、今後、質問紙調査の内容、文面、項目には再検討が必要である。 調査結果として調査項目の11について、ほとんどの回答者(カンボジア)が「とてもそう思う」と回答した。一方で、日本人数名に同様の質問をしたところ、「犯罪者が悪い」と答えた。このことから、犯罪の要因をどこに重点化しているかと言う点と、犯罪に対する脆弱性との関連が見られそうである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題では、「包括的な安全教育」プログラムの開発として、A-安全教育、B-安全管理、C-組織活動、D-道徳教育、E-健康管理の5つのターゲットを想定し、研究を推進しているところである。2022度においては、Aに関連して、これまでコロナ禍において実践できなかった発展途上国における「反脆弱性」の安全教育に着目し、調査を実施することができた。そこで本研究において「反脆弱性の学校危機マネジメント」調査を作成し、カンボジアにおいて、児童生徒、市民等に調査を実施することができた。調査結果を分析しているところだが、本研究課題の安全教育プログラムにおいて重要な示唆が得られる効果がみられている。また、国内の公立小学校で、安全教育プログラムのモデルを実践し、分析を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
今後においては、本研究課題における「有効」で「持続可能」な安全教育プログラムの作成において、「反脆弱性」に着目し、2022年12月の調査で明らかになった課題を修正し、国内外において共通して実施可能な、有効な調査用紙を作成し、最終的な調査を実施し、分析する。その結果と、2022年度に実施した公立小学校での安全教育実践結果を合わせて、その分析結果を反映した安全教育プログラムを完成させる。 その安全教育プログラムについて、2023年9月に開催される「日本安全教育学会第24回奈良大会」において、シンポジウムを開催して発表し、評価を得た後、その成果を反映して「有効」で「持続可能」な包括的な安全教育プログラムを完成させる。今後、今回の調査結果を分析し、本研究課題に活用するときに、「反脆弱性のクライシスマネジメント」が包括的な安全教育プログラムの「有効性」と「持続性」に影響を及ぼしていくことが考えられる。この「反脆弱性」については本研究課題のスタート当初は取り入れていなかった概念だが、現時点で新たに有効な概念であることが明確になってきた。現時点で開発中の安全教育プログラムに「反脆弱性」の概念を取り入れて構成し、学校教育現場で実践することによって、その「有効性」と、そこからつながる「持続性」をもったプログラム開発につなげていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、予定していた研究調査が5割程度実施できなかった。したがって、予定していた研究費を使用せず、次年度に繰り越すことになった。 2023年度については、コロナ禍が5類扱いになり、これまで滞っていた調査を実施することができる見込みとなった。そこで、国内外の最終的な調査と、その知見を本研究に生かし、研究を完成させたい。また、今年度は申請者が年次学会長となって学会大会を開催する。そこでも助成金を有効に活用し、研究のよりよい成果へと結びつけたい。
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