研究の3年目にあたる2021年度においては、これまでの研究の成果を『高校生のための思索ノート』(コールサック社、2021年11月刊行)として取りまとめた。本書では、「お手紙」「モチモチの木」「海のいのち」を始めとする小学校教材、「少年の日の思い出」など中学校教材、そして、「ヌガー」「神様2011」「東京物語」など高等学校教材までを含めて複数テクストを基にしながら思考を深めるための具体的な方法と内容について記述し、高校生が主体的に学ぶことにより思考力・判断力・表現力を深化するためのヒントを掲載している。複数テクストによる学びの深さを探究し、下記の論考をまとめた。1髙橋正人(2022)「石沢麻依『貝に続く場所にて』の分析と教材としての可能性について~重ね・トラウマ・断片・身体・声・持物をめぐって~」(『言文』第69号、福島大学国語教育文化学会、2-17)、2髙橋正人(2022)「アーノルド・ローベル『お手紙』における作品分析に関する研究-登場人物の思考の在り方と手紙の持つ機能をめぐって-」(『仙台白百合女子大学紀要』第26号、69-83)、3髙橋正人(2022)「斎藤隆介『モチモチの木』における作品構造に関する研究-〈語り〉の特異性及び言葉のネットワークをめぐって-」(『仙台白百合女子大学教職課程研究センター報』第1号、5-14) なお、例えば2においては、手紙の機能として、一つ目は伝達意思そのものとしての手紙の機能であり、二つ目には伝達性を有したもの、三つ目には記録としての残存性、四つ目は、発信者と受信者とが相互に交わし合う互酬性、五つ目は、手紙を発信者から受信者に向けて届ける媒介者の存在とそれに伴って生じる時間的・空間的な遅延である。終章では、「文学国語」における探究的な学びの一環として、「待つこと」をテーマとした複数テクストを基にした授業構想を提案している。
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