研究課題/領域番号 |
19K02700
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
安部 朋世 千葉大学, 教育学部, 教授 (00341967)
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研究分担者 |
西垣 知佳子 千葉大学, 教育学部, 教授 (70265354)
橋本 修 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (30250997)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 言語分析力 / 文法力 / 誤用 / データ駆動型学習(DDL) |
研究実績の概要 |
2021年度は,以下のことを行った。 ①分析ポイントの明確化について:平成29年告示学習指導要領に基づく小学校国語教科書と英語教科書について,言葉のルール(または文法)という観点から調査を行い,英語教科書では全体の1.9%,国語教科書では7.0%の割合で,言葉のルール(または文法)に関する内容が記載されていること,英語教科書では音声を基盤とするコミュニケーションや活動を通して英語を学んでいるのに対し,国語教科書では文のルールを発見するよりも説明を読むことで学ぶことが多いこと等を明らかにした。また,小学校1年生から中学校3年生を対象に,各学年教科書の文章と各学年の児童生徒の作文について,それぞれの文章の難易度をReadability計測ツールを用いて測定し,児童生徒が受容する文章と産出する文章との難易度について,「概ね小学生においては,同一学年において児童作文のほうが教科書よりも難易度の高い文章を産出している」「概ね,教科書の難易度のほうが,学年が上がることによる難度上昇のピッチが高く,今回の結果では中学校2年生で教科書文章のほうが難度が高くなった」ことを示した。 ②教材作成:2021年度は,小学校では品詞について学習する国語科DDL教材を,中学校では主述のねじれを生じている文と同じ主語で主述のねじれを生じていない文とを比較する国語DDL教材を作成し,小学校と中学校でそれぞれ実践を行った。また,英語と国語との連携の観点から「語のまとまり」に関するDDL教材を作成し,小学校で実践を行った。 ③実践と検証:2021年度末に実施した国語DDL教材の実践に関する分析・考察,受容する文章と産出する文章に関する分析・考察,英語と国語との連携に関する実践の分析・考察については,国際シンポジウムを含む学会で口頭発表を行い,有益な指摘を得ることができた。また,それらの指摘を踏まえて考察を進め,論文2本にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
以下に示す進捗状況から,やや遅れていると考える。 ①については,教科書分析や児童生徒の受容する文章と産出する文章に関する分析・考察等を行うことで,分析の観点の明確化を着実に進めることができている。②については,小学校では品詞について学習する国語科DDL教材を,中学校では主述のねじれに関する国語DDL教材を作成し,小学校と中学校でそれぞれ実践を行った。また、英語と国語との連携の観点から「語のまとまり」に関するDDL教材を作成し,小学校で実践を行った。前者については,新型コロナウイルス感染症の影響もあり,授業実践の実施が年度末となったため,年度内に実践の分析に着手できず,やや遅れが生じたと考える。よって,研究期間を1年間延長する予定である。③については,国際シンポジウムを含む複数の学会において口頭発表を行うとともに,その一部を論文2本にまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を1年延長する。2022年度の研究計画と推進方策は以下の通りである。 ①について:必要な分析は概ね終了したが,必要に応じて追加調査を行い,分析ポイントのさらなる明確化を図る。文法的な観点を中心に内容面も含め対象を広く設定し,児童・生徒の実態に即した分析ポイントの抽出に努める。 ②について:2021年度末に実施した授業実践結果の分析・考察を行う。また,2021年度の実践において明らかになった課題を踏まえ,教材作成を進める。作成した教材の有効性を検討する授業実践においては,2022年度も新型コロナウイルス感染症の影響により予定していた実践が困難になることも想定される。教育現場における教育を最優先に考え,授業実践の時期については現場の事情を優先させて決定する。学校現場で活用できる教材の開発を目指し,必要に応じてオンライン授業への応用などについても検討を行う。 ③について:研究の成果について学会発表及び論文投稿を行い,研究の客観性を図る。2021年度も引き続き新型コロナ感染症のため,計画の変更を余儀なくされる可能性があるが,状況に柔軟に対応しつつ研究を進めまとめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度も引き続き新型コロナ感染症のため,発表を予定していた学会がオンライン開催となり,予定していた旅費の使用がなくなったこと,また同じく新型コロナ感染症の影響により授業実践の実施が遅くなり、データ入力等の人件費・謝金の使用が予定より少なくなったこと等から,残高が生じることとなった。2022年度は主として授業実践結果のデータ入力等の費用として使用する計画である。
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