研究課題/領域番号 |
19K02703
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
松原 道男 金沢大学, 学校教育系, 教授 (80199843)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 評価システム / 学力調査 / 学習状況調査 / 自己組織化マップ / カリキュラム・マネジメント |
研究実績の概要 |
本研究では,学力及び学習状況調査の関係を分析するシステムの開発を行うことにより,学校のカリキュラム・マネジメントに役立てることを目的とした。令和元年度の研究においては,どの学校でも使用できるようにExcelを用いた評価システムの開発を行った。評価システムは,学力調査と学習状況調査の項目数,児童・生徒の人数を入力し,学力調査と学習状況調査の素データをExcelのシートに張り付けることにより,自動で分析されるものである。 まず,学習状況調査の項目が2次元マトリクスである自己組織化マップに配置され,回答傾向の類似したものが近くに配置される。その自己組織化マップに,各学力調査が,自己組織化マップの回答パターンに類似したところに位置付けられる。以上の開発したシステムの動作について確認を行った。また,2018年度と2019年度の石川県内のA中学校のデータを入手し,それをもとに分析を行った。分析結果について,平均,標準偏差,相関などの基礎的な統計分析と本システムによる分析結果を比較検討した。その結果,本評価システムは,従来の統計分析と異なる特徴を示すが,従来の分析との矛盾は生じないと判断できた。また,本評価システムでは,学習状況の項目と学力との全体の関連を視覚的に表現できる利点があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は評価システムの開発までを研究の目的とした。評価システムは,次のような内容で作成することができ,おおむね計画通りの研究が進んでいると判断できる。評価システムは,自己組織化マップの手法を取り入れ,Excelを用いて学習状況調査の結果について,二次元マトリクスによって関係のある項目が近くに表示されるようにした。項目の回答の高低は,段階的(青系統→赤系統)に色をつけて表示した。次にこのマップに学力調査の結果を配置できるようにした。その際,学力調査と学習状況調査の基準が異なるため,学力調査の座標軸を1,000段階で移動させながら,学習状況調査の自己組織化マップに最も一致する自己組織化マップの位置を特定した。このことによりどの学力がどの学習状況の項目に関係しているか,そしてその項目への回答の選択肢の数値の高低はどのようになっているかを表示することができた。具体的な学力調査のデータをもとに,評価システムを用いて分析を行った。その結果について,平均,標準偏差,相関などの基本的な統計処理との比較を行った。特に,学習状況調査は4段階の尺度を用いた回答であり,一つの選択肢に回答が偏る項目が見られる。そのような項目については,散布図は偏っており,回答の小さな変動で,相関係数が大きく変動する。このことに対して,自己組織化マップでは類似性を分析するものであり,この問題を解消できると考えられた。また,本評価システムでは,従来の分析と矛盾を生じるものではなく,項目全体の関連と学力の位置づけを図として示すことができ,全体を把握しやすいという特徴を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度については,何校かの小・中学校の学力調査,学習状況調査のデータを入手し,分析した結果をそれらの学校に提示する。そして,関連している項目が学校のマネジメントの方向性と一致しているかなどの情報が,学校のカリキュラム・マネジメントに,どのように役立つかについて聞き取りを行う。また,システムでの分析方法,視覚的な結果の表示,利用のしやすさなどについて,学校教員の意見を聞きながら,システムの改善を行う予定である。 令和3年度については,完成したシステムの利用方法と,具体的な分析データ,結果のマップなどの解釈の事例,さらにそれをもとに学校において行った授業改善やカリキュラム・マネジメントの事例などを集め,報告書としてまとめる予定である。作成したシステムおよび利用法のマニュアルと実際の用い方については,動画にしたもの,さらに分析結果の解釈,それに基づいた改善などの事例を報告書にしてUSBメモリに収め,小・中学校の関係者に配布する。また,開発したシステムおよび報告書はすべてweb上に公開し,ダウンロードできるようにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
1,000円以下の端数が生じたため。この金額は次年度においては、謝金に充てる。
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