研究課題/領域番号 |
19K02704
|
研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
中野 真志 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (90314062)
|
研究分担者 |
加藤 智 愛知淑徳大学, 文学部, 准教授 (00619306)
金津 琢哉 東海学園大学, 教育学部, 教授 (20633522)
神谷 裕子 愛知学泉大学, 家政学部, 講師 (70826669)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 非認知的能力 / 社会情動的スキル / スタートカリキュラム / 総合的な学習 / 指導事例 |
研究実績の概要 |
本研究では、非認知的な能力の育成に関して、幼児教育と小学校教育の接続、特にスタートカリキュラムに着目している。それゆえ、2019年度では、愛知県K市のA小学校でスタートカリキュラムのアクションリサーチを行った。実際にスタートカリキュラムを開発し、幼保育園及び小学校1年生の担任と15名の子供たちへの入学前から入学後数か月にわたりインタビューを実施した。そのデータを基にテキストマイニングによる分析を行い、スタートカリキュラムの教育効果を検証した。それらの研究成果を生活科・総合的学習教育学会の全国大会で自由研究発表し、愛知教育大学生活科教育講座の講座紀要で論文にまとめた。 次に、米国のサービス・ラーニングの先行研究を参考にしながら、小学校の教科等の中で生活科と親和性の高い、総合的な学習で非認知的な能力を育成するための理論的枠組みを検討し、総合的な学習が非認知的スキルの育成に寄与する可能性が高いことを論証した。それらの研究成果を日本生活科・総合的学習教育学会の全国大会で自由研究発表し、愛知教育大学大学院教育学研究科・静岡大学大学院教育学研究科共同教科開発学専攻『教科開発学論集』、および、愛知淑徳大学教育学会『学び舎-教職課程研究-』で論文にまとめた。 最後に、小学校における非認知的な能力に関する指導事例の分析と考察のために、生活科と総合的な学習の先進校として全国的に有名な奈良女子大学附属小学校と富山市立堀川小学校での公開授業を参観し調査研究を行った。前者では、2年生の「しごと」と「朝の会」、後者では4年生の総合的な学習の「食品ロス」、「富山湾」に関する授業記録と映像記録等の研究資料を入手できた。また、奈良女子大学附属小学校に関する実践史研究として、学習法の地方における受容と展開の研究を日本生活科・総合的学習教育学会の全国大会で自由研究発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、学術的「問い」を次のように設定した。(1)生活科に応用可能な非認知的な能力に関する心理学的、教育学的研究の成果とは何か。(2)生活科における非認知的な能力を育成するための指導法とはどのようなものか。(3)生活科における非認知的な能力を育成するための評価方法とはどのようなものか。(4)生活科における非認知的な能力を育成するためのモデルプランとはどのようなものか。 2019年度には、(1)に関して、国内外の非認知的な能力に関する心理学的、教育学的研究の文献を収集し、それらを分析・考察した。具体的には、実施状況報告で述べた通り、幼児教育から小学校低学年への接続、特にスタートカリキュラムに関連する理論的、実践的な研究資料を収集、分析・考察し、それをスタートカリキュラムの開発とそのアクションリサーチに活用した。また、米国におけるサービス・ラーニングの先行研究、特に非認知的スキルの育成に関連する資料を収集、分析・考察し、それを総合的な学習に応用する理論的枠組みを検討した。そして、総合的な学習が非認知的スキルの育成に寄与する可能性が高いことを論証した。さらに、(2)に関して、非認知的な能力を育成するための指導法を検討するために、生活科と総合的な学習の先進校である富山県の堀川小学校と奈良女子大学附属小学校で調査研究を行い、これらの研究成果を生活科・総合的学習教育学会の全国大会で自由研究発表し論文としてまとめた。 生活科教育で理論的・実践的に重視されている非認知的な能力とは何か、それをいかに育成しようとしてきたのか、これまでの理論的、実践的知見を解明するために、日本生活科・総合的学習教育学会の学会誌、ブックレットに掲載された全ての論文をPDF化した。これらのデータは、生活科における非認知的な能力の育成するための評価方法、および、モデルプランの開発にも活用できる。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度に引き続き、国内外の非認知的な能力、非認知的スキル、および社会情動的スキルに関連する心理学的、教育学的研究の文献を収集し、それらを整理し、分析・考察を行う。2019年度の研究成果により、特に、サービス・ラーニングにおける非認知的スキル、OECDによる社会情動的スキルに関連する先行研究の諸成果を本研究に活用できるのではないかと考えている。また、2019年度において、日本生活科・総合的学習教育学会の学会誌、ブックレットに掲載された全ての論文をPDF化したデータを学術論文、実践論文に分類・整理し、テキストマイニングにより、定量的に分析し考察する。そして、生活科教育において重視されてきた非認知的な能力とは何か、それらを育成する指導法と評価法について、今後も継続的に検討する。 これらに加えて、社会情動的スキルに焦点化した幼児教育と小学校教育の接続期カリキュラムの研究、サービス・ラーニング型総合的な学習における非認知的な能力の向上に関する研究、生活科と総合的な学習の先進校である富山県堀川小学校、奈良女子大学附属小学校における調査研究なども継続して行う。なぜなら、非認知的な能力を育成する上で、子供たちによる活動と体験を重視し、子供たちの生活と密接に関連し、家庭や地域社会と連携した探究的で協同的な学習が不可欠であると考えているからだ。また、そのような学習を促進する学級づくりだけでなく学校文化の形成も視野にいれる必要があると思われる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度、日本生活科・総合的教育学会の全国大会紀要、学会誌、および、ブックレットに掲載されている実践報告と論文をPDFにデータ化する予定であったが、学会誌とブックレットの論文のみデータ化した。全国大会紀要に関しては、実践報告を精査する必要があり、また、他の関連学会の学会誌における生活科関連の論文をPDFにデータ化した方が効果的であると考えたからだ。これらのデータ化の費用及び分類・整理のための謝金が未使用となった。この計画を次年度に実施し、それらのデータをテキストマイニングにより計量的に分析する予定である。そのためのソフトの購入も計画している。 今年度、アクションリサーチ及び調査研究のためにiPadを購入する予定であったが、購入できていない。社会情動的スキルに焦点化した幼小の接続期カリキュラムの開発におけるアクションリサーチ、生活科と総合的学習における非認知的な能力を育成するための指導事例の分析、サービスラー型総合的学習の調査研究のために、次年度にiPadを購入し、研究を効率的に進める予定である。
|