研究課題/領域番号 |
19K02706
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
冨安 慎吾 島根大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (40534300)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 漢字学習 / 方略 / 学習観 |
研究実績の概要 |
2021年度は、漢字学力を整理するための枠組みについて検討し、その枠組みに従って教科書の分析を行った。 漢字学力を整理するための枠組みについては、マルザーノの新分類体系を参照しながら、「漢字に関する学力の構造を記述する方法についての検討」『国語科教育』90、26-34 として発表した。ここでは、マルザーノの新分類体系の特徴である「認知システム」と「知識」という枠組みを活用することで、従来とは異なる視点から、漢字学力を整理することができた。このことで、漢字学力についての体系的記述を行なうための枠組みを設定することができた。 この整理に従い、「国語教育において形成される漢字観についての検討」全国大学国語教育学会2021年春期大会 および 「漢字に関する学習内容についての研究:小学校国語教科書の分析を中心に」全国大学国語教育学会2021年秋期大会 において発表を行ない、その活用を試みた。 前者においては、特に「知識」の中にある「原理」の部分として、漢字運用観および漢字学習観を位置づけることができることを論じた。後者においては、枠組みに従って小学校国語教科書を分析することで、教科書会社間の違いを明らかにするとともに、現状の教科書を中心とした漢字学習の教科内容における不足を指摘することができた。 2022年度は、この枠組みを用いながら、漢字教科書の分析をさらに進めるとともに、漢字学習方略についての記述を行なうことで、学習者への支援の方法や評価の方法についての検討を行なう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、2021年度に評価方法の検討・実施を行う予定であったが、漢字学力の枠組みの設計に時間を費やしたため、現段階は、それに続く教科書分析・方略分析を行っている段階である。 本研究は、カリキュラム開発を目的としており、既存のカリキュラムの内実については、漢字学力の枠組みと教科書分析によって明らかにする目処が立っている。残された課題として、新しいカリキュラムを提案するために、既存の教科書が取り扱っていなかった漢字学習方略についての整理を行い、それを元に評価方法を考案することを目指したい。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、設計した漢字学力の枠組みにしたがい、(1)教科書分析 (2)方略記述 (3)評価方法の開発を中心に実行する。 (1)教科書分析については、2021年度から進めていたため、ほぼ完了している。このことによって、既存の漢字学習のカリキュラムについては、その成果と課題を指摘する準備ができている。 (2)方略記述については、国語教育・日本語教育・特別支援教育を対象とし、おおむね調査を完了したため、枠組みの設計と記述を行うことで、カリキュラム開発に資する資料の作成を行い、その公表によって成果を示したい。 (3)評価については、(2)方略記述を経て、その方略と関連づけながら方法の具体を考案する。従来の漢字学力の評価は「読み/書き」に傾斜しており、これまで本研究が対象としてきた「漢字観」や漢字に関する概念的な知識、漢字学習方略については評価の対象とされてこなかった。本研究は、その最終的な成果として、新たな評価方法の考案を行うものである。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予算では、学会発表などの旅費を計上していたが、コロナ禍の影響によって全てオンライン開催となり、その予算を執行しなかったため。
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