本研究では漢字観について、漢字の性質に関する理解や漢字をどのように捉えるかという「漢字性質観」、漢字を学習する際の方法や考え方を示す「漢字学習観」、そして実際に漢字をどのように使うかという「漢字運用観」として整理し、漢字観の形成を漢字学習のカリキュラムとして設定した。 この上で、漢字を構成する要素(音韻的、形態的、意味的側面)についての包括的なレビューを行い、各要素を漢字学習における学習内容として整理した。この整理に基づき、漢字学習方略の調査と小学校国語科教科書に掲載されている漢字の学習内容についての調査を進めた。このプロセスでは、教科書の漢字カリキュラムがどのように構成されており、またどのような点が改善可能かを評価した。 以上の研究から明らかになったことは、漢字学習のカリキュラムを設計するためには、個々の漢字をその構成要素等を中心にデータ化し、学習内容としての漢字を体系的に捉える観点を設定した上で、それに基づいた学習方略の支援方法と評価方法を設計する必要があるということである。 そこで、本年度は、これまでの検討で得られた知見を基に、漢字に関する総合的なデータベースを作成するための基礎的な設計を行った。このデータベースは、漢字の形状、音韻、意味のほか、漢字の用例(およびその親密度)、学習上の注意点、頻出誤字や誤答例など、教育的な観点から多岐にわたる情報を網羅するものである。このデータベースは、漢字学習のカリキュラム設計の基礎資料となり、また、現在の漢字学習の内容を見なおすための資料となるものである。
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