研究課題
分散型リーダーシップの発揮構造を把握するため、国内については実地調査を行い、海外については文献に記載されたものを素材にし、zoomを用いたインタビュー調査を行った。また理論的な整理のために文献レビューを行った。その結果、「市内修学旅行」を実施した国内事例については,教育委員会、校長、学年団の各段階で分散型リーダーシップが、それぞれの段階における受容度と自律性の高さに支えられて発現していた。他方、登園自粛中の保育実践事例については、その制約状況に起因して、互いに尊重し信頼し、対等に学び合う柔軟で応答的な関係が見られた。承認と委任のプロセスによって分散型リーダーシップが発現しており、保育者間の信頼関係、当事者意識、自律性(自由度)を前提とし、階層的リーダーシップや実践の主体を変換する機能を有し、組織風土を改善するなどの想定外の帰結を伴うことで、実践の持続性を有するものであった。アメリカにおけるポジティブな学校改革の事例に共通するのは、教員の自律性や専門性が尊重されていたこと、教員たちの当事者意識と信頼関係が醸成されていたこと、協働的な規範が構築されていたこと、校長のリーダーシップが重要であったこと、「分散型リーダーシップ」に適した学校のコンセプトとして「リーダーシップ密度の高い組織(leadership dense organization)」が挙げられていたこと、であった。また、イギリス調査を通じて、「システム・リーダーシップ」と呼ばれる、学校群という広域の学校改善や学校主導型の教育システムを志向する新たな方策が導入されたことを確認した。リーダーシップ開発の規模、持続可能性という点で、学校間連携や地域課題に基づくリーダーシップのあり方が模索されてきたのである。加えて、教員研修についての学校への権限・自律性の付与が行われ、自校を超えるリーダーシップモデルが模索されていた。
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三重大学教育学部研究紀要(教育科学)
巻: 73 ページ: 249-269