研究課題/領域番号 |
19K02726
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
小池 研二 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (90528382)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 国際バカロレア / 美術教育 / Approaches To Learning / 探究の問い |
研究実績の概要 |
国際バカロレア(International Baccalaureate以下IB)を理論的,実践的に調査研究し,その趣旨や特徴を新学習指導要領に則った日本の中学校の美術教育に応用し構成主義的な学習について検証していく研究をスタートすることができた。 ①理論的な研究では,IBの汎用的スキルであるApproaches To Learning(以下ATL)ディプロマプログラムで知識そのものについて学習する「知の理論(TOK)」等教科を超えたIBの特徴的な学びについて,IB公式ガイド,市販書籍等を分析し内容を検討することができた。TOKでは在外の日本人学校と交流を持つことができ,日本人学校でIBの学びを生かす可能性を得るという成果があった。TOKの考え方は小学校や中学校でも生かせることが本交流で確認することができた。②実践的な研究では研究フィールドである東京学芸大学附属国際中等教育学校(以下学芸中等),横浜国立大学附属横浜中学校(以下附属横浜中)で研究をスタートできた。学芸中等ではディプロマプログラムの授業について,複数回の参与観察を行い,同校公開授業研究会では研究協議会で助言者として講演した。附属横浜中では,探究の問いを設けた構成的な学習を学習指導要領に基づいて研究した。また,ATLについて具体的に生徒に示しながら授業を行い,ATLの効果についてアンケート調査を実施し,同校公開研究発表会で助言者として講演した。横浜国立大学附属鎌倉中学校でも探究の問いを設けた研究を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①理論的研究ではTOKの内容について研究に取りかかることができた。また,在外の日本人学校の小中学校教員と交流するなどして小学校や中学校でも知識そのものを思考していくTOKの学習が有効に働くことがわかった。ただ,理論自体が高度であり,大人であっても難しい面もあり,どのように日本の学習に参考にしていくか注意する必要があることがわかった。②フィールドである学芸国際中等,附属横浜中での研究は順調に開始することができた。学芸国際中等では,DPの授業を参与観察しさらに概念的理解について講演する機会も得ることができた。附属横浜中では,IBを生かした学びについて計画段階から取り組むことができ,事後アンケート調査まで段階を追って進めることができた。また公開研究発表会では,アンケート調査結果について報告し,本研究の途中段階での成果を発表することができた。附属鎌倉中では,研究自体をスタートすることができたが,授業を通しての研究は2020年度を予定している。③実施校調査についてはドイツのボン,デュッセルドルフインターナショナルスクール,ボン近代美術館とコンタクトをとり,調査予定であったが,新型コロナウィルス感染防止により今年度は中止となった。ただ,次年度以降状況が改善されれば調査は可能であると先方から承諾は得ているので今後調査したい。
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今後の研究の推進方策 |
①理論的な研究について今年度の経過を生かして続行する。特にTOKについては他の研究者とも共同して研究する方向性も見えてきたので,内外の学校を調査しながら理論的調査を行う。ATLについては,IBだけでなく汎用的スキル全般について理論的な調査を進める。汎用的スキルについては学習指導要領を理解する上でも重要なところであり,実践面も含めて調査を継続する。またIB全般についても研究を行い,最新の情報を取り入れる必要がある。必要に応じてワークショップや研究会に参加し最新の情報を取り入れる。②実践的な研究では学芸国際中等,附属横浜中,附属鎌倉中での研究を継続する。学芸国際中等では美術だけではなくTOKについて,授業参与観察,生徒や教員へのインタビュー等を行い,DPのコアであるTOKの研究を進める。附属横浜中ではATLと教科内容の関係,探究の問い,探究テーマと行った探究的な学習について実践研究を進める。附属鎌倉中でも時期を絞り概念的な学習の研究を行う。他にも計画している附属鎌倉小学校等での研究を開始する。③実施校調査については新型コロナウィルス感染防止対策等で困難が予想されるが,可能であればドイツ,ボン,デュッセルドルフインターナショナルスクール,ボン近代美術館での調査を実施したい。また,在外の日本人学校,パリインターナショナルスクール,国内でのIB実施校の調査を行いたい。研究の途中段階について,特に中学校の実践について可能であれば学会等で発表を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
機材の購入等は順調に予算を執行し研究を行うことができたが,新型コロナウィルス感染防止対策の影響により,海外のIB実施校及び関連社会教育施設調査ができなかった。来年度は,今年度実施できなかった海外及び国内のIB実施校及び関連施設についての調査を行いたい。最終年度には報告書を作成したい。
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