研究課題/領域番号 |
19K02726
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
小池 研二 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (90528382)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 国際バカロレア / IBATL / 中学校美術 / 工芸教育 |
研究実績の概要 |
国際バカロレア(International Baccalaureate以下IB)を理論的,実践的に調査研究し,その趣旨や特徴を新学習指導要領に則った日本の中学校の美術教育に応用し構成主義的な学習について検証した。令和2年度は以下の研究をおこなった。 ①理論研究はIBDPのTOKの内容について,文献調査をおこなった。 ②実践研究では2019 年9 月~ 12 月の期間に中学校でおこなった。本研究では国際バカロレアの汎用的スキルである ATL スキル(Approaches to Learning skills)を授業当初から生徒に示し,生徒に理解させた上で,学習に取り組ませることにより,生徒がスキルを自覚して学習に生かせるかをアンケート結果から分析した。さらに,自然素材を生かした木工の制作を通して良さや美しさといった概念理解をさせるために「探究の問い」を設定し,問いを考えながら学習を行い,より深い学びができるかどうかを生徒の記述から分析した。その結果ATL スキルについて具体的に説明をすれば多くの生徒がスキルの意味を理解して学習の各場面で自覚していることがわかった。この研究の結果は大学美術教育学会「美術教育学研究」第53 号(2021)に掲載された。 ③現地調査では,新型コロナウイルスの影響で,国内外とも計画していた調査をすることができなかった。しかし,ボン国際学校,デュッセルドルフ国際学校,ボン現代美術館と連絡を取り今後の研究について確認をすることができた。ボン現代美術館からは美術館での美術館教育の資料を入手することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①理論研究ではTOKの内容について資料購読を中心に検討することができた。資料を検討する中で,思考法,問いの立て方,知識について考えること等について理解を深めることができ日本における中学校の美術科に於ける探究的な学びにも有効ではないかということが考えられた。しかし,具体的な調査までは進展しなかった。 ②中学校現場での実践研究は国際バカロレアの汎用的スキルである ATL スキル(Approaches to Learning skills)に焦点を当て,さらに工芸を題材とした授業において設定した探究の問いからは,工芸品の美しさや,工芸の必要性について,制作活動を通して理解を深めていることがわかった。 ③現地調査については国内外のIB学校について訪問調査ができなかったため,この面での研究に遅れが出た。
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今後の研究の推進方策 |
①理論研究ではIBTOKとIBDP美術について調査を継続し,DPに於ける探究的な学びについて考察を深めていく。一方IBTOKとIBMYP美術との関係,IBDP美術とIBMYP美術との関係についてもさらに研究を深め,IBの構成主義的,探究的な学習について理解を深める。このことによりIBの学びを日本の美術教育へどのように応用していくかの研究をまとめていく。 ②実践研究においては,中学校の美術教育を中心にIBの探究的な学びをどのように応用していくかの調査を継続する。特に今年度は探究の問いから概念理解におけるMYPの学習について再度確認し,美術に於ける概念理解について確認する。複数のフィールドにて研究をおこないより研究に客観性を持たせる。 ③新型コロナの影響が落ち着くのを待ち,当初の計画通りヨーロッパ(ドイツ等),アジア(ホンコン等),アメリカ大陸(カナダ等)のIB校の調査をおこない,IB教育の現状を調査する。 以上の内容について成果を報告書にまとめていきたい。しかし,新型コロナの影響により学校現場の調査や海外での調査が滞る心配があるのが現時点での課題である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響の影響で予定した海外調査が2年連続して不可能になったため,旅費の執行が滞った。また国内調査についても学校現場に調査のために訪問することができなかった。公開研究会や学会についても中止やオンライン開催になったため旅費の執行が滞った。また学校現場が新型コロナの影響で休校措置等があったため機器の導入等に影響が出た。新型コロナが落ち着けば,ヨーロッパ,アジア,アメリカ大陸等の海外の学校及び美術館等の現地調査,国内の学校や美術館等の現地調査を再開し研究を進展することができる。また,公開研究会への参加も可能となる。学校も本格的に再開すればPC等の機器を導入し授業分析をおこなう。また海外調査をおこなうことで通訳等の謝金等も発生し予算が執行されると考えられる。
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