本研究は,東アジアにおける市民性育成教育の視点から歴史教育の理論的構築を図るために,現代日韓の歴史教育理論を比較教科教育史的に解明することが目的である。本研究の全体計画と到達目標をもとに,市民性教育の起点を踏まえて,戦後の日韓の歴史教育理論を1950年代から1990年代までの4つのタームに区分して分析する。本年度の研究成果は以下のようである。第一に、歴史教育研究の活性化によって使われるようになった「歴史的思考」や「歴史認識」などの概念語の意味を再考して哲学的に議論することで研究の深化を企図したことである。第二に、世界史教育を改善する視点として教育課程の改訂だけではなく、教科書叙述の比較分析から具体的に生徒の学習レベルに合わせた理論的検証の必要性を検討したことである。第三に、歴史教師を養成する課程において「授業の専門家」の資質を育成する科目として「歴史教育史」の可能性を模索したことである。今後は、日韓の歴史教育に関わる多様な市民性教育理論を比較分析することが課題である。
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