本研究では、世界の中等教育段階の母語教育で,現実的な文脈で有効に働く高次の言語能力「批判的読解力」を身につけさせることが重要な課題となってきているととらえ、研究の目的を,日本と国際バカロレア,欧米の授業における批判的読解・表現力の形成的評価のあり方について,比較調査を通して、それぞれの特徴を明らかにすることを目的とした。しかし、COVID-19のパンデミックにより、現地を訪問しての授業観察は、行うことができなかった。そこで、研究の目的は保持しつつ、研究の計画と方法を変更し、次のことに取り組んだ。文学テクストの読みの授業を対象とすることにした。 海外については、文献調査に切り替えた。アメリカにおける詳細な授業過程の分析をテーマとする研究(Goff;2018)を対象とした。一人の教師による文学テクストを取り上げた単元において、作品のみならず、歴史的な背景に関する資料を読み、単元のはじめに書いた文章と終末に書いた批評文について、論証性の観点から評価を行っていた。 国内については、近隣の高校において、授業観察および教師へのインタビューを行った。1年次で作成した批評文を教材にして、3年次において別の作品に関する批評文を作成する授業を行い、長期に渡る変化をふまえた評価を行っていた。国内の国際バカロレア校での授業観察は、新たに行うことはできなかった。 アメリカ、日本、どちらも論証性を観点とした評価をルーブリックを用いて行っていた。 一方で、オンラインによる授業研究の可能性を探るため、複数台のビデオカメラによる映像および複数のマイクロフォンからの音声を状況に応じて切り替えながら、パソコンに取り込み、オンライン会議ソフトを通じて配信するシステムの構築を行い、附属学校において試行した。音声の映像の配信は十分な質を得られたが、音声の明瞭さに課題が大きいことが判明した。
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