研究課題/領域番号 |
19K02734
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
藤原 一弘 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (40824082)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ESD/SDGsの重要性の周知・発信 / 持続可能な地域・学校づくり / 探究・深い学びとESD / 総合的学習の改善・改革 / 教師の職能開発 / 教師と学び手の認識変容 / ESD実践の蓄積と発信 / 実践者同士のつながりと成長 |
研究実績の概要 |
ESDは以前よりその重要性について認識されながら、具体的な指導方法や効果的な評価方法が確立できず、日本の学校現場では十分に実施されているとは言い難い状況にある。ESDやSDGsに関連付けた実践を取り組んでいる学校もあるが一部に留まっている上、日本ではユネスコスクールを中心として展開するもののように捉えられ、全国に広く浸透していない。またイベント的な取組や体験ばかりの実践が多く、高い教育効果を得られていないことも大きな課題として挙げられる。 これらの課題の解決を図るために、社会の内外に点在しているESDの学びのリソースを結び付ける機能・役割を設置し、①ESDを通して行う児童生徒の質の高い学びの構築、②ESDやSDGsの重要性や意義を認識し、深い学びを創り出す教員の育成とその資質能力の向上、③教員を目指す学生の学びの深まりの3つを同時に達成していくことを目的として研究を進めている。 研究1年次に当たる本年度は、ESDに関わる研究者や実践者をメンバーとして研究代表者の所属する講座内に「愛大・ESDラボ」を設置し、活動や取組を実施することを通して、以下の三点の成果が得られたとともに、広くESDの意義や重要性について発信・検討することができた。一点目は、ESDやSDGsに関する研修会や学習会を実施し、教員やNPO、自治体や企業など多様なESD実践者をつなげ、学びのリソースの重層化を図ることができたことである。二点目は、学生に対してESDやSDGs、深い学びに関する授業を実施することで、次世代のESD実践者・教育者の育成が促進されたことである。三点目は小中高の教員と共に、ESDの視点を踏まえたカリキュラム作りに着手できたことである。 研究2年次は、1年次取り掛かった取組の継続とESDカリキュラムの開発・実践と検証を行いつつ、ESDに関する教員や学習者の意識調査や実態調査を行っていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で最も重視して取り組もうとしているのは、ESDの学びのプラットフォームづくりとその機能を生かしたESDの普及・啓発であり、その拠点として研究代表者の講座内に「愛大・ESDラボ」を正式に設置することができた。また、研究協力者を始め、多様なESD実践者・研究者にメンバーとして入ってもらうことができた。さらに定期的な研修会を開催することで、ESDやSDGsに関心のある者同士が集い、学校現場での導入や指導の在り方について研鑽を深めることができた。 加えて、各地のESDの実践をデータベース化したり、情報や研究成果を発信したり、するための手段の一つとしてホームページを立ち上げ、運用を開始することができた。これは、当初計画していた年度よりも早い段階での整備ができた。今後、ESDラボやホームページを活用しながら更に情報や実践の集積を行い、地域にESDを広く浸透させ、研究の検証や分析を円滑に行うことが可能になり、計画が順調に進んでいると言える。 一方で、地元教育委員会と連携したESDカリキュラム開発と実践・分析については、着手まで至らなかった。地域のESDに関する情報収集や実態把握に時間がかかったことが大きな理由として挙げられる。今年度中に地域の実態や学校でのESDの現状把握ができたこともあり、次年度以降は、設立したESDラボを活用しながら進めていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
地域のESD推進、なお一層の学校教育におけるESDの浸透を図るべく、当初の計画どおり、次の2点について研究を進めていきたい考えている。 1点目は「ESDを軸にしたカリキュラム開発・実践・検証」である。地域におけるESDのモデルカリキュラムとなるような実践を積み上げていくことが、その普及にも大きく影響すると考えている。そのために以下の3点を実施予定である。①学校現場で取り組まれているESDの実践や総合的な学習の時間での取組をより良いものに改善していく。②学生の深い学びを構築し、ESD実践者を育成するために教職科目「総合的な学習の時間の指導法」等の授業において、地元自治体、学校と協力してカリキュラム開発と実践を行う。③さらなるESD実践の掘り起こしとデータベース化を行い、ESDを気軽に学び、参考にできる機能を構築する。これらを実施するために地元教育委員会、自治体、学校、NPOと連携協力して実施することが確定している。 2点目は「学生・児童生徒・教員・その他関係者にどのような「変容」が起こるかの調査検証・発信」である。ESDの学びが「変容」をもたらす学びであることを検証することが喫緊の課題となっている。本研究においても、ESDや総合的な学習の時間の指導に関しての実態調査を行うとともに、ESDを実践することによる効果検証について定量的・定性的調査のパネルデータ分析を教育委員会等と連携しながら進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は計画より早期にホームページを開設することができたため、そのための費用が必要となった。また、ESDに関する研修会を定期的に開催することができたため、当初計画よりも人件費や謝金に係る費用が増えた。反面、先進地への視察については当初の計画から減らすことができたため、当該年度の所要額より30,174円低くなった。 差額分については、翌年度分として請求した助成金と合わせて、成果発表を兼ねて実施する視察費用、物品費として本年度計画していた高速スキャナの購入等に充てる予定である。
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