研究課題/領域番号 |
19K02735
|
研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
花坂 歩 大分大学, 教育学部, 准教授 (20732358)
|
研究分担者 |
藤井 康子 大分大学, 教育学部, 准教授 (10608376)
佐野 比呂己 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (60455699)
大島 崇 大分大学, 大学院教育学研究科, 准教授 (70715276)
石出 和也 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (90552886)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 読書空間 / 教科融合 / 読むこと |
研究実績の概要 |
本研究では、これからの時代を開拓できる人材を育成すべく、3つの観点から、読書行為の質的充実と教育的効果の波及を目指している。掲げている問いは「読書行為は、想像を拡張させる音楽と想像を具体化する造形物、そして、その体験を刻印する言語化を連動させた授業によって、生涯にわたって持続する実効性をもつのではないか」である。 当該年度(2019年度)は、《理論構築期》と位置付け、関連書籍の収集と研究実績の再構成、国語教育史領域の基礎研究に取り組んだ。 研究代表者(花坂歩)は研究分担者(藤井康子)とともに、美術科と国語科の教科融合に取り組み、2本の共著論文を執筆した。これらの論文によって明らかにしたのは、言語環境、言語生活、言語活動の相関性と重要性についてである。ここでは美的体験と言語化の融合が必要であることを説いた。理論面におけるもう一人の研究分担者(石出和也)は「読書を活性化させる音の活用」について、文献の収集・整理を進めているところである。2020年度以降、3者の統合を図る予定である。なお、これらは交付申請書に記載した第1の目的であった。 目的の第2に掲げていた「小学校や公開講座での授業実践を通して、理論の実用性と汎用性を向上させる」については、2020年度以降の研究予定内容である。研究協力者との打ち合わせを進めている他、研究分担者(大島崇)が関連の文献を収集・整理している。 第3の目的である授業実践史研究については、研究代表者(花坂歩)が2本の論文を執筆した(内、1本は共著)。これらは閉鎖的な「読むこと」(認識)の指導を「書く」(表現)という表現につなげるための基礎的研究の成果である。なお、執筆に際しては、研究分担者である佐野比呂己からの助言を得ている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度(2019年度)は、《理論構築期》と位置付け、関連書籍の収集と研究実績の再構成に取り組んだ。 研究代表者(花坂歩)によるイメージ形成論(1970~2000)の具体的検討については終えることができている。すでに論文を執筆し、査読を受けているところである。この論文では、深川明子(金沢大学名誉教授)の研究足跡を追いながら、その中で見出された授業記録を詳細に検討することで、イメージ形成・共有を試みた教師とテキストの関わり、教師と子どもの関わりをより具体的にすることができた。併せて、授業実践史研究として、研究代表者による1950年代の「生活綴方教育」の文献調査については、現代の自己調整学習との関連付けにまで拡張させ、共著を1本、執筆している。1970年代からの文学教育の課題の1つとして、文学作品の世界観の受容に指導が傾倒したことが挙げられる。その補完の糸口が生活のありのままを書かせようとした生活綴方実践にあると考え、基礎研究に取り組んだ。これらは目的の3に該当する。 目的1の教科融合的研究については、研究分担者の藤井康子とともに、美術科と国語科の融合を試み、2本の共著論文を執筆した。これらの研究成果に石出和也(研究分担者)の研究成果を加え、読書空間を創出する授業を構想していく予定である。 目的2に授業実践研究については、当該年度(2019年度)は2020年度以降の準備期間であった。2020年度からは小学校での授業実践や大学公開講座を利用しての実証検討が控えている。そのために、研究協力者との検討会を定期的に開催し、授業構想を立てているところである。
|
今後の研究の推進方策 |
研究の第2ステージとして考えている《理論試行期》(2020)では、研究代表者と研究分担者(石出、藤井)が共同で授業案を構想し、研究協力者が実践、佐野比呂己、大島崇が検証することになっている。 具体の1つめは、読書行為を取り巻く空間性(状況性)の創出である。これまで読書は国語科という狭い学問領域で検討されるばかりであった。それを音楽科、美術科(図画工作科)の研究者と共同で研究する。音楽科教育の石出和也(北海道教育大学)と美術科教育の藤井康子(大分大学)とともに、読書空間に音(聴覚刺激)と造形(視覚刺激)を加えることを試みたい。 具体の2つめは、現場の実践家との共同研究体制の確立である。研究代表者はこれまでも現場教師とともに多くの授業開発に取り組み、教育現場に学術知見を波及させてきた。本研究においても、第1の目的を研究協力者(水間清香・大分市立明治小学校、甲斐理彩・別府市立別府南小学校)とともに授業化し、その成果と課題を検討する。 具体の3つめは、戦後の国語教育実践の再評価である。研究代表者は1970年代から1990年代の文学教育の通史研究に取り組む中で、当時の授業が子どもの「つぶやき」を重視していることを見出している。当時の教師たちは子どもの「つぶやき」を引き出し、紡いでいく中で、子ども(読み手)のイメージ形成とクラスメイト(他者)とのイメージ共有を目指していた。1950年代の生活綴方教育の調査研究とともに、解明を進めていきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
執行予定であったパソコン及びプリンタの購入を2020年度にした(\300,000)。 / 2019年度の成果普及費を研究分担者の別予算にて代替した(\160,000)。2020年度に研究代表者が執行する。 / 感染症対策による影響で2020年度の計画に修正が必要となり、そのための「授業開発費」を2020年度に持ち越さざるを得なくなった(\90,000)。 / その他、消耗品、書籍購入など、定価より安価に購入できたものの残額(\26,000)。2020年度に執行する。
|