研究課題/領域番号 |
19K02739
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
三村 隆男 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (10324021)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 21世紀型教員 / キャリア・ステージ / コンピテンシー / キャリア形成 |
研究実績の概要 |
本研究は、変化が激しく予測不可能な未来社会において自立的に生き、社会の形成に参画する児童生徒の教育を担う教員の育成を、個人のキャリア形成と養成・研修を担う教育行政や教育機関との関連でとらえ、その課題を解明し、21世紀型教員の質保証のシステムを構築することを目的とする。その際、2008年に創設された教職大学院の新たな教員養成の機能に焦点を当てる。具体的には、以下の三つである。 ①児童生徒のキャリア教育を担当する教師のキャリアステージ及びステージで求められるコンピテンシーを明らかにする。そのための方法として、 ②米国カリフォルニア州のキャリア・テクニカル教育の教師資格や 韓国における進路教育に携わる進路進学相談教師の資格について、州教育省や教員養成機関との関連で取得要件と学校現場での職務内容を分析し、活動に求められるコンピテンシーを明らかにする。次に、日本におけるこうした教員養成の場として、 ③2008年に創設された教職大学院の教員養成機関としての機能を明確にし、①②の研究で明らかになった教師のキャリアステージにおけるコンピテンシーを身に付けるカリキュラム開発を行い、21世紀型教員の質保証システムの構築を目指す。 その理由としては、ICT、IoT、AIなど科学技術の目まぐるしい進展、国際化がもたらすグローバルスタンダードの到来や外国籍の児童生徒の増加、一方で、いじめ、不登校、貧困などによる格差、家庭の教育力の低下など学校現場はかつてない環境に置かれ、教員には高度な専門性や指導性が求められ、その育成は喫緊の課題だからである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、基盤研究(C)「教師のキャリアステージに応じたキャリア発達プログラム」に続くものである。同研究では、教職大学院の学部新卒学生対象に、学校マネジメント教育を通して、教育管理職へのキャリア・パスを吟味させるべく、プログラム開発、テキスト作成まで到達した。2019年度は、本研究への円滑な移行を研究上進めた。 21世紀型教員の質保証については、GAFAに代表されるICT先端地域でありGDP世界第5位の米国カリフォルニア州における教員養成研究をもとに、これからの産業を支える人材づくりに資する教員養成の視点、及びそれを支える教育管理職の在り方について検討を進めていくため、2020年8月22日にカリフォルニア州立大学ログビーチ校のコリーン・マルティネズ准教授を招聘し、21世紀以降を支える教育を行う21世紀型教員像を議論した。9月には、同准教授の案内で、ロスアンゼルス市、ロングビーチ市で展開されている、教科と職業を強くむずび付け21世紀以降を支える人材育成を企図したLinked Learningに携わる教師の専門性育成(professional development)にキャリア形成の機能を見出した。 2020年には、授業名「学校マネジメントの視点からみた学校教育研究」(2単位)を実際に立ち上げることとなり、プログラムを活かし、テキストを活用するためのシラバスづくりに入った。 2020年の3月に再度海外出張にて、教師の専門性育成について更なる知見及び資料収集を目指していたが、新型コロナウイルスの影響で海外渡航を断念せざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、①キャリアステージにおけるコンピテンシーの特定、②21世紀型教員の質保証システムの構築、③学校マネジメントに関する教育課程の開発、の三つのストリームによって成立している。教師の各キャリアステージにて直面する課題に取り組むコンピテンシーを、これまでの知見をもとに、1年目を米国、2年目は韓国の実態調査や文献研究をすすめることで構造化していく予定であったが、新型コロナウイルスの影響で専門性向上(professional development)に対する研究が十分でなく、今年度は米国及び韓国訪問を予定する。一方で、教職大学院の実務家教員と共同で編纂した学校マネジメントの視点で学校教育を扱った教員養成テキストを教職大学院授業で実際に使用し、受講者の意見聴取を行いながら効果的な授業開発を進め、2年目予定のプログラム開発に加えマニュアル作りも推進する 上記の①と③の二つの流れを、キャリアステージにおけるコンピテンシーの構造化に融合させ、キャリア教育に携わる教師のキャリア形成と学校教育を俯瞰的に見る視野を育成することで、教員の質保証システムにつながる養成段階の教職大学院学部新卒学生に機能する教師教育をめざしていくことになる。 研究を進めるにあたっては、先の基盤研究(C)(平成25年~平成27年)にて、各キャリアステージと、それぞれに直面する課題を、「教員としての成長」「専門性の伸張」「局面固有の課題対応」「地域などとの連携」の分野で整理した結果得られた、学校マネジメントの視点の有効性の意義を逐次確認していくこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染防止の影響を受け、海外渡航の制限、国内移動の制限、学校の臨時休業、研究会の中止など、研究上、さまざまな物理的制約を受け、研究費の執行ができなかったため。
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