2023年度は、新たにアフリカ、タンザニアの小学校と児童福祉施設(孤児院)において「生命(いのち)のイメージ」を主題にワークショップと鑑賞活動を展開し、そのデータをこれまでの記録と合わせ、分析を試み、アフリカの子どもたちの表現をとおした鑑賞活動によって生成された日本の子どもたちの「生命(いのち)」の解釈について分析した。 着目したいのは「状況や関係」の表現である。日本の子どもたちは「つながり,支える,つつむ」等といったイメージを,自然物相互や自然と人間相互の関係において言語化しているが,アフリカの作品の鑑賞活動の過程において,多くの子どもがその視点からイメージを意味づけているところに特徴が見られる。 また,現実/新たな世界,善/悪,昼/夜,光/影といった対の概念において生命を解釈しようとする見方は,日本の子どもたちの作品の中にも稀に生/死,喜び/悲しみ等の表現において確認されてはいるが,本事例の鑑賞活動においては,その見方がより多くの子どもたちにおいて言語化されている。また,日本の子どもたちの表現では,「生命力への共感」を表す作品は少なかったが,そのイメージは鑑賞活動において深まっている。 鑑賞活動後の記述の特徴的な内容では、相違点として色彩の豊かさや色使い,ものの捉え方,見方,描き方の違いに気づきながら,共通点として,考えていること,伝えたいことは同じであると子どもたちは捉えている。環境や経験,文化的背景から表現の違いを感じながら,「生命(いのち)」への見方や感じ方,考え方に共通点があることを子どもたちは見つけ出し,自分の「生命(いのち)のイメージ」を深めている。
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