本研究は、幼児期の防災教育のカリキュラムを考案することを目的としている。大阪近郊を中心とした保育者対象(251人)のアンケート調査では、「設定保育での防災についてのカリキュラムを構築する際、設定保育に防災に関する内容を取り入れることが難しいと思われる要因は何か」という問いに対し、「幼児期の子どもの防災教育の知識・技術が少ない」や「設定保育として行う時間が少ない」の回答率が高い結果となった。また、防災教育として絵本や紙芝居の読み聞かせは多く実践されている一方、多くの就学前施設にて外遊びや運動遊びが取り組まれているにもかかわらず、体力・運動能力を高める活動が防災教育に関連していないことが示された。 子どもの身体的特徴、いわゆる頭が大きく腕・脚が短く転びやすいことをふまえ、体力・運動能力を考慮した子どもの自助力、自ら考えて行動できる力を高める防災教育が必要であることがこれまでの研究を通して明らかになっている。これらの結果を踏まえ、特に4歳児・5歳児の各年齢における体力・運動能力と防災教育を連携した具体的なカリキュラムを配信する防災教育絵本を作成し、子どもに対する防災教育の実践を行った。 最近、大地震だけでなく地球温暖化に関係する自然災害の多発・拡大が懸念されている。保育所・幼稚園・認定こども園といった就学前施設における自然災害に対する防災教育は、非日常的な避難訓練などの実施と防災につながる行動を身につける園生活の中での遊びを中心とした保育活動の展開の 2 点が重要となる。防災教育は保育内容領域「健康」に示されているが、保育内容の 5 領域すべてに関係している。今後の防災教育として、子どもの体力・運動能力に応じた防災教育の関心を高め、子どもたちと関わる保育者の防災教育に関する知識・技術の向上が課題であると考える。
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