研究課題/領域番号 |
19K02744
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
中谷 常二 近畿大学, 経営学部, 教授 (70398501)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 公共 / 社会科教育 / 倫理 / 公共政策 / 公民 |
研究実績の概要 |
文部科学省は2022年度から主権者教育につながる「公共」を必修科目として新設する。「公共」科目の学習指導要領解説では、哲学・倫理学的な知見を用いて政治経済などの公共政策的な事例を考えることが、要求されている。そこで本研究は高校生が倫理学的な思考ツールを用いて、法・政治・経済などの身近な公共政策的なテーマを討議し、学習することができる教材および研究書を作成することを目的としている。 本年度は教材の作成に取り掛かっている。令和2年度における研究の実績は、本教材の執筆、編集作業をおおよそ成し遂げたことである。本教材は、哲学・倫理学を専門とする研究者と、行政学の研究者および行政実務者による協働による成果である。また、本教材は現役の社会科教員も参画しており、教材としての妥当性について詳細なチェックがなされている。 第1章では、哲学・倫理学の概念である「功利主義」、「義務論」、「正義」、「自由」、「責任」などを解説した。これまでも高校の「倫理」科目では、このような概念は教示されてきた。しかし、多くの教材の解説がやや難解であり、生徒が倫理学の概念に親しみを持てるようなものは極めて少ない状況があった。本教材では、学校内外で出会うような倫理的なジレンマ事例をあげ、生徒自身にとって倫理的問題が身近なものであることが実感できる体裁となっている。また、その解説も、事例を多用し、倫理学の概念に親近感が得られるような工夫がなされている。 第2章以降は、現実に起こっている「環境問題」、「移民・難民問題」、「働き方改革」など公共政策上の課題を取り上げ、その課題に対する哲学倫理的な解説を加える形式となっている。 本教材は令和3年度中に大手教材出版社から刊行の予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定どおり、令和2年度においては下記のように順調に研究は進んでいる。 1.「公共」科目の教材の作成:研究者、行政実務者、高校教員からなる研究体制による「公共」科目の教材の執筆が終わり、最終的な編集段階に入っている。 2.高校教員への面談調査:公民科目や主権者教育に積極的に取り組んでいる現役高校教員への面談調査を行うことができた。 3.高校生への模擬講義:制作中の「公共」副教材の内容の一部を高校(広島県立忠海高等学校)の生徒に対して模擬講義として行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.「公共」科目の教材の出版:令和3年度中に出版する予定である。 2.高校「公共」テキストプロジェクト研究会の開催:「公共」科目教育についての研究書の出版に向けて研究を深める。 3.高校での模擬講義:ここまでの研究で得られた知見をもとに、高校での模擬講義を予定している(令和3年5月予定)。 4.学会発表:令和3年6月に開催される日本公民教育学会研究大会において本研究の成果を発表し、社会科教育の専門家との対話を通じて、本研究をより精度の高いものとする。 5.海外先進事例収集のための訪問調査:当初計画では令和2年度中にシティズンシップ教育において様々な先進事例があるヨーロッパの教材研究を進めるためイギリスに訪問調査の予定であったが、新型コロナウィルスの影響によりかなわなかった。海外訪問調査については令和3年度の実施も難しいことが予想されるが、状況を鑑みて適切に対応する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では令和2年度中にシティズンシップ教育において様々な先進事例があるヨーロッパの教材研究を進めるためにイギリスに訪問調査の予定であった。しかし令和2年度は新型コロナウィルスの影響により、海外出張は不可能であった。本予算については、令和3年度に執行予定である。
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