研究課題/領域番号 |
19K02744
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
中谷 常二 近畿大学, 経営学部, 教授 (70398501)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 公共 / 社会科教育 / 倫理 / 公共政策 / 公民 |
研究実績の概要 |
2022年度から実施される高校の学習指導要領の改定により、新科目「公共」が新設された。この「公共」の学習指導要領解説では、哲学・倫理学的な知見を用いて政治経済などの公共政策的な事例を教示することが要求されている。本研究では、高校生が倫理学的な思考ツールを用いて、身近な公共政策的なテーマを討議する教材の作成を試みてきた。 その研究成果として、2021年7月に『討議事例から考える「公共」の授業』、中谷常二編著、清水書院を刊行した。本書前半では、功利主義(スマホを持っていない人がいてもクラスのSNSグループをつくってよいか)、義務論(人に親切にすることは善いことか、また人に親切にすることを強制できるか)、公正(目の前にあるケーキをどのように分けたら公平といえるだろうか)などのテーマで、高校生が身近なテーマで討議し倫理学理論に対する理解を深めていくことができる教材となっている。本書後半では、環境問題(プラスチックごみによる環境破壊を食い止めるにはどうしたらよいだろうか)、移民・難民問題(日本は、将来の労働力として外国人労働者の受け入れを拡大すべきか)、SDGs(どのような視点でSDGsと向き合えばよいだろうか)などの具体的な社会的課題とその倫理学的観点からの解説がなされている。 本書で作成した教材を用いて、2021年5月に東京家政学院高等学校において高校生を対象とした模擬講義を行うことができた。 また、2022年3月には本書を用いて、公務員が政策を倫理学の知見に基づいて分析する「倫理的政策分析研修」を公務人材開発協会にて開催した。 本書の教材としての活用方法などについて、2001年6月に第31回日本公民教育学会全国研究大会において「倫理学を活用する新科目「公共」の教材作成について」と題して研究報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.「公共」科目の教材の作成:2021年7月に『討議事例から考える「公共」の授業』、中谷常二編著、清水書院を刊行した。 2.高校での模擬講義:ここまでの研究で得られた知見をもとに、東京家政学院高等学校での模擬講義行った(2021年5月)。 3.学会発表:2021年6月に第31回日本公民教育学会全国研究大会で「倫理学を活用する新科目「公共」の教材作成について」と題して研究報告を行い、高校教員、研究者との討論を通じて、本研究をより精度の高いものとできた。 4.出版教材のより広い活用:『討議事例から考える「公共」の授業』を用いて、公務員を対象とする政策分析に倫理理論を用いる倫理的政策分析研修を公務人材開発協会において2022年3月に開催した。 5.海外先進事例収集のための訪問調査:新型コロナウィルスの影響により海外の訪問調査については行わなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1.学会発表:2022年6月に開催される日本公民教育学会研究大会において本研究の成果として、「高校生を対象とした倫理学的思考の教示法についての一考察」と題して研究報告を行う。 2.本研究によって出版した『討議事例から考える「公共」の授業』を用いて、公務員を対象とする政策分析に倫理理論を用いる倫理的政策分析研修を公務人材開発協会において2023年初頭に開催する予定である。 3.模擬講義の実施:2022年6月に大宮開成中学校において本研究で作成した教材を用いて模擬講義を行う。本教材の内容を実践することで、より生徒にとって理解しやすい教材の作成につなげていく。 4.海外先進事例収集のための訪問調査:当初計画ではイギリスでの訪問調査の予定であったが、新型コロナウィルスの影響により困難が予想されることから、別の地域での訪問調査を予定している。調査場所については新型コロナウィルスの影響により現在のところは流動的である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響により、海外での研究調査ができなかった。また国内外の学会の参加旅費や、各種打ち合わせの出張旅費を計上することができなかった。2022年度においては新型コロナウィルスの影響も減少することが予測されることから、国内外の出張を再開し、研究をすすめていくことを計画している。
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