研究課題/領域番号 |
19K02744
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
中谷 常二 近畿大学, 経営学部, 教授 (70398501)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 公共 / 社会科教育 / 倫理 / 公共政策 / 公民 |
研究実績の概要 |
本研究の成果として2021年7月に『討議事例から考える「公共」の授業』、中谷常二編著、清水書院を刊行した。本書は、社会的な課題を高校生が倫理学の思考法を用いて検討することを教示するための教員向けの教材である。それを踏まえ、本年度は中学・高等学校において、実践的な研究を進めることを意識してきた。 2022年6月に本教材を用いた講義を埼玉県に在する大宮開成中学校にて行った。受講した生徒から積極的な質疑もあり、本研究により作成した教材の有用性を実感できた。また、12月には兵庫県に在する甲南高等学校においてリサーチフェアに講評者として参加し、本研究での知見を高校生に共有することができた。甲南高等学校においては2023年3月に、SGHネットワーク外部評価会議の委員として課題探求型講義の改善にも参画でき、社会的な課題への高校生の取り組みについての研究のみならず、助言、指導ができた。 2022年6月には、第32回日本公民教育学会全国研究大会において、「高校生を対象とした倫理学的思考の教示方法についての一考察」と題して学会発表を行い、有意義な質疑を行うことができた。 また、本研究によって得られた知見をもとに企業向けの研修教材の開発も行った。企業に生じるジレンマ状況において倫理学の知見を活かして討議をする企業倫理研修「インテグリティアプローチ研修」を作成し、多くの企業で実践することができた。インテグリティアプローチ研修は大手電力会社などの大手企業にも取り入れられ、役員は『討議事例から考える「公共」の授業』を購入し、学びを深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.2021年7月に刊行した『討議事例から考える「公共」の授業』、中谷常二編著、清水書院を用いて、大宮開成中学校での講義を行うことができた(2022年6月)。 2.学会発表:2022年6月に第32回日本公民教育学会全国研究大会で「高校生を対象とした倫理学的思考の教示方法についての一考察」と題して研究報告を行い、高校教員、研究者との討論を通じて、本研究をより精度の高いものとできた。 3.出版教材のより広い活用:本研究で得た知見をもとに企業向けの倫理研修教材「インテグリティアプローチ研修」を開発し、多くの企業で実践できた。 4.海外先進事例収集のための訪問調査:新型コロナウィルスの影響により海外の訪問調査については行わなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1.海外先進事例収集のための訪問調査:University of Hawaii: West Oahuに滞在し、Professor Keith H. Sakudaと共同研究をすすめる。また、情報収集のためThe 8th World Business Ethics Forumに参加する。この学会ではEmerging from Crisis through Socially Responsible and Ethical Businessをテーマに話し合われる予定であり、社会的な問題への倫理的な対応とその実践策についての研究を深める。 2.『討議事例から考える「公共」の授業』、中谷常二編著、清水書院を用いて、高等学校での模擬講義等を行う。また、高校生の社会問題への取り組みを研究するため、甲南高等学校でのリサーチフェアへの参加などを通じ、より実践的な研究にする。 3.『討議事例から考える「公共」の授業』を用いた社会人向け教育の開発にも取り組む。企業人や公務員が社会的な課題に対して倫理的な思考法を学ぶ教材を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響により、海外での研究調査ができなかった。また国内外の学会の参加旅費や、各種打ち合わせの出張旅費を計上することができなかった。2023年度においては新型コロナウィルスの影響も減少することが予測されることから、国内外の出張を再開し、研究をすすめていくことを計画している。
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