研究課題/領域番号 |
19K02751
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
川島 芳昭 宇都宮大学, 共同教育学部, 教授 (70282374)
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研究分担者 |
高山 裕一 作新学院大学, 人間文化学部, 特任教授 (00802571)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | プログラミング教育 / 小学校 / 教授法 / 課題解決能力 / 目的意識 / 思考力 |
研究実績の概要 |
本研究は,小学校プログラミング教育を支援するカリキュラムの検討を行い,プログラミング的思考力とプログラムの具体化を実現する教授フ レームワークを構築するとともに実証実験からその有効性を検証することを目的としている。特徴は,第一に小学校の学習内容を教科単元ごと に分類し,2019年改訂の教科書,学習指導要領,学習指導要領解説などの調査を基にプログラミング教育を含めた指導場面を抽出する,第二に 教授フレームワークを開発し,学習指導の枠組みを考案しその効果を実証するところにある。2020年は,開発した教授フレームワークを用いた実証授業を行い,効果の検証と改善に努めることを主に研究を行った。 COVID-19の影響もあり,当初予定通りの実践を行うことが難しい状況ではあったが2つの実践を実施することができた。1つは,目的意識を主体にした教授フレームワークを用いた実践である。この実践では,解決すべき大きな課題(目的)を児童に提示し,その課題に対する目標分析を行いながら,系統的な目的意識を持たせたプログラミング教育を目指した。児童は大きな課題を細分化した小さな課題を順番に解決することで,最終的に大きな課題が達成できることを実感するとともに,プログラミングに対する意識の高さを示した。2つ目の実践では,課題解決に必要な「気付き」「思考力」「主体的,メタ認知」「対話的」「成長,深い学び」の5つの観点を設定し,課題解決に必要な思考力の向上を目指した教授フレームワークを用いた実践である。この実践では,プログラミング活動毎に児童に5つの観点に対する自身の考えを書かせ,その内容を元にしたリフレクション活動を実施した。このリフレクション活動により児童は,自分が何に気付いたのかを気付かせる効果や協働的な学びが推進され,プログラミングを用いた課題解決に対する考え方を向上させる効果が示唆できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小学校プログラミング教育に必要なプログラミング的思考力の育成として,目標分析を含めた目的意識と課題解決のための思考力の2つの観点から教授フレームワークを構築し,実践することができた。また,実践結果からプログラミングに対する児童の実態,能力,思考など多くの知見を検討するためのデータを取得することができた。このデータを分析し,最終的な研究の目的である小学校プログラミング教育のための教授フレームワークを元にした指導計画を作成する準備ができたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は,昨年度得られた知見を基にし,教科指導の中にプログラミングを含めた課題解決の実践を実施する予定である。これまで,小学校プログラミング教育では,総合的な学習の時間など教科外での実践として,ロボット制御などを中心とした課題解決を行ってきた。これは,プログラミングそのものを課題解決の方法の1つと児童に意識付けすることもねらいとしているためである。この意識が低いと,プログラミングを行うことが主体となる学習になる危険性がある。 教科指導にプログラミング教育を含めた実践事例の多くは,プログラミングを行うことに対して児童が強く意識してしまうため,教科目的が十分に達成できないという課題が挙げられている。しかし,多くの教科において課題解決能力を育成するための学びが行われているため,プログラミングを解決のための方法として扱うことは重要だといえる。そこで,教科指導においてプログラミングを用いた課題解決を実践し,かつ教科目的を十分に達成することはこれからの小学校教育にとって重要であるといえる。そこで,目標分析を含めた目的意識と課題解決のための思考力の2つの観点から作成した教授フレームワークを統合し,教科指導の中で教科目標を十分に達成させることをねらいに研究を推進する。また,その成果を元にした年間指導計画の見直しをし,広く周知することで,小学校プログラミング教育の意義と効果を達成する実践に貢献することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品費が当初予定していたよりも安価であったため若干の差分金が発生した。2021年度の研究遂行にあたり,消耗品及び旅費等によって使用する予定である。
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