本研究は,小学校プログラミング教育を支援する教授フレームワークを構築し,その有用性を検証することを目的に3年間の研究を行ってきた。背景は,教員のプログラミング教育への知識や経験が不足していることなどの課題が報告されており,プログラミング教育を実現することへの不安を持つ教員の支援を行うためである。特に,プログラミング的思考力を養成するには,適切な授業を設計する能力が求められる。そこで,本研究では,小学校プログラミング教育を段階的に指導するための枠組みをフレームワークとして提案し,プログラミング教育の経験が少ない教員の授業設計を支援することを目的に実施してきた。 提案する教授フレームワークは,小学校プログラミング教育の授業設計に必要な要素を取り出し,それを元に授業の立案を支援するものである。2020年度は,COVID-19の影響により十分な実証実験を行うことができなかったため,フレームワーク構築に必要な十分なデータを得られたとは言えない。しかし,2021年度は,限られたデータの中から重要となる要素を抽出し,「学習目標(課題)」「目標分析」「内容の細分化・明確化」の三つの視点から検討する教授フレームワークを作成する事ができた。具体的には,次のように段階的に授業設計・立案を支援する。①児童の「興味・関心」を引き出す必然性やゲーム性を持つ題材の設定,②児童の実態に応じた難易度の設定,この興味・関心や難易度を元に,学習目標や課題が設定される。③設定した学習目標や課題の目標分析を行い,目標の明確化や細分化をすることで,授業ごとの目標,段階的な学習設計に繋がると言える。また,細分化した目標に従って段階的に課題を解決することは,論理的思考力や課題解決能力の育成にも繋がると考えられる。以上の段階的な枠組みにより,授業を提案する事ができた。
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