本研究は、国語科の「文字を書くこと」に関する学習の効率化・最適化を図るために、これまで別立てのカリキュラムとして行われてきた書写学習を、国語の言語活動の学習などと効果的に関わらせ、「言語力」や言語的「表現力」の育成に機能するよう再組織することを目的とする。そこで令和3年度は以下のように研究を進めた。 1.カリキュラム案(第2次案)の評価・検討: 新たに提案する「書字学習」のカリキュラム案(令和2年度の研究で作成した第2次案)について、国語教育実践者及び研究者に対して意見聴取を行い、書字や書くことによる表現力育成の観点から、カリキュラム案(第2次案)を評価・検討した。 2.シミュレーションによる実践的検証: 新たに提案する「書字学習」のカリキュラム案(第2次案)について、本学部附属学校及び連合大学院生の所属学校、県内外の書写教育研究校などにおいて、フィールド・ワーク調査の方法により、実践的・理論的に検証した。 3.研究成果の発表と公開: 表現力育成等の観点によるカリキュラム案(第3次案)を作成し、関連学会において研究成果の発表と公開を行った。 研究期間全体を通じて、「言語力」及び言語的「表現力」の育成に機能する新たな「書字学習」の枠組みや構造を明らかにする中で、学習者のメタ認知書字方略の実態や構造を明らかにしたことは具体的な成果である。それらに基づき、あらたな「書字学習」の学習内容とその組織化も達成でき、国語の「言語活動」と積極的に関連づけた新たな書字教育のカリキュラムを提案することができた。これによって国語科の学習と書写の学習を有機的に関連づけることができ、学習の効率化・最適化を図ることにもつながった。
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