研究課題/領域番号 |
19K02761
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
伊藤 真 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (70455046)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 多文化共生 / 外国人児童生徒 / 言語的文化的多様性 / 音楽活動 |
研究実績の概要 |
今年度は、多文化共生に関する内外の諸制度について、資料収集およびインタビュー、教育実践を行った。まず、国内における学校および社会教育施設の多文化共生の状況については、東京外国語大学で行われた日本比較教育学会において本研究に関連する研究者から情報を得た。また、東京外国語大学の多言語多文化共生センターで行われている外国人児童生徒の日本語支援に関する取り組みが有効であるという示唆を得た。さらに、東京学芸大学国際教育センターで行われた多文化共生フォーラムにおいて、言語的文化的多様性をもつ子どもたちの発達支援に関する先進的な取り組みについて情報を得た。これらの情報を整理し、今後行う予定である外国人児童生徒に対する学校の取り組みと授業分析の枠組みを構築する。 このほか、東広島市の外国人児童生徒をめぐる状況の把握のため、東広島市教育文化振興事業団の多文化共生担当者にインタビューを行った。東広島市の外国人児童生徒は、学校の適応と放課後の居場所のいずれにおいても、十分な支援が行き届いていない状況が確認された。多文化共生担当者との協働によって、夏季休業中を利用して日本語教室に参加する子どもたちを対象に、子どもの自己肯定感の向上やストレス発散を目的とした音楽ワークショップを企画・実施し、一定の効果を得た。 国外における多文化共生の状況については、ドイツのハンブルク州を事例として文化教育としての音楽活動や音楽学習の機会を精査した。その結果、州レベル、音楽教育団体レベル、民間企業・財団レベルで、多様な音楽学習の機会が提供され、それらの形態はさまざまであること、小学校段階と中学校段階をつなぐものであること、学校と芸術団体の協働的活動が重視されていることなどの特徴が見て取れた。文化的多様性を尊重した音楽学習として、学習機会の多様性とその持続性、公益性が極めて重要であることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた、多文化共生に向けた国の政策や地方自治体の支援についての情報は、概ね収集された。東広島市で行った外国人児童生徒を対象とした音楽活動は予定にはなかったことであるが、今後、外国人児童生徒に対する音楽教育の取り組みについて検討する際のポイントとなる視点を得ることができた。また、今後も継続的な実践活動を行うことも視野に入れている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、ドイツを対象として、学校における取り組みと異文化間教育に関わる音楽科教師の力量形成プロセスについて調査を進める予定である。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によって、現地調査が困難になることが予想される。これは、国内における調査も同様であるため、メールを介した情報収集や電話による聞き取り調査などに置き換える必要がある可能性がる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって、出張が制限されたため、次年度使用額が生じた。次年度は特に海外の現地調査を予定しており、旅費や謝金として使用する予定である。
|