研究課題/領域番号 |
19K02773
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
酒井 達哉 武庫川女子大学, 教育学部, 准教授 (10638050)
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研究分担者 |
原田 信之 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (20345771)
宇都宮 明子 島根大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (40611546)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | コンピテンシー / 生活科 / 事実教授 |
研究実績の概要 |
研究初年度となる2019年度は、まず2017年版生活科学習指導要領とそれに準拠した指導計画を分析し、新しい学習指導要領のもとでも活動主義、社会領域と理科領域という生活科内での統合の論理の欠如、第3学年以降の社会科や理科といった教科との接続の論理の欠如という生活科の課題を克服しきれていないことを明らかにした。次にドイツのNRW州の事実教授レアプランを分析し、事実教授ではコンピテンシーの設定を通して、生活科が抱える課題を克服していることを明らかにした。これらの考察に基づいて、生活科の課題を克服するための方策を提示するとともに、コンピテンシー志向への実質的な転換が生活科の課題を克服した新しい生活科を再構築するための方途であると結論づけた。 つまり、生活科では幼児期との接続から、体験活動やそれに伴う心情的情緒的な情意面が重視されることは当然のことである。しかし、育成を目指す資質・能力を設定し、それを明確な評価規準で評価するというコンピテンシー志向への転換を図る2017年版において、情意的側面の資質・能力は設定しがたく、評価規準による客観的な評価になじまないものであることも確かである。ましてや、幼児期だけでなく、中学年の各教科への接続を図るためには、情意的側面の資質・能力ではその役割を担うことはできない。生活科という統合教科から社会科・理科への分化を可能にする知的側面、即ち、認識体系の構築が実質的にコンピテンシー志向へと変革するための課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度となる2019年度は以下の2点を柱に研究を進めることができた。 ○生活科における歴史及び理科学習の調査研究 旧低学年社会科及び理科、生活科の科学的認識の基礎育成に関連したカリキュラム、教科書、実践事例等を収集し、比較分析の対象となるようその実践内容を整理し、生活科独自のコンピテンシーの特定や生活科授業開発のための根拠情報とした。 〇事実教授における歴史及び理科学習の調査研究 第1に、事実教授における歴史及び理科学習の重要性の根拠となる文献、ノルトライン・ヴェストファーレン州の事実教授の指導要領、教科書を分析した。第2に、事実教授学研究者の協力を受け、事実教授で学習する歴史的・自然科学的内容は中等段階以降の歴史的内容や自然科学的内容とどのように接続しているのか、子供の生活界と後続する教科の知識体系をどのように関連づけ、どのようなコンピテンシーを育成しようとしているのかを明らかにした。これら2つの調査を通して、事実教授においてコンピテンシーが持つ歴史学習と理科学習を接続する機能の解明を試みた。 そして、以上の2点の研究の成果を「横断的・縦断的な接続を図る生活科の再構築-ノルトラン・ヴェストファーレン州事実教授レアプランを手がかりに-」と題した学術論文にまとめ、『人間文化研究』33号(名古屋市立大学大学院人間文化研究科)に掲載することができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目となる2020年度は、以下の2点を柱に研究を進める。 〇事実教授における歴史及び理科学習の調査研究(Ⅱ) 調査研究(Ⅰ)を踏まえ、実際の事実教授の授業では子供の生活界と後続する教科の認識体系をどのように関連づけて、コンピテンシーをどのように評価しているのかを分析する。ここでは、事実教授における歴史及び自然科学の事象の実践レベルでの解明を試みる。 〇生活科におけるコンピテンシー・モデルの開発研究 第1に、事実教授における歴史及び理科学習と生活科における歴史及び理科学習の比較分析を行い、生活科ではどのような学習を実施すれば中学年以降の歴史及び理科学習と接続できるのか、子供と生活界と後続する教科の認識体系を関連づけることができるのかを考察する。第2に、第1の考察を踏まえ、生活科独自のコンピテンシー・モデルを開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度末に、研究分担者である原田信之(名古屋市立大学)と宇都宮明子(島根大学)がドイツのノルトライン・ヴェストファーレン州及びニーダーザクセン州等に研究出張を行う予定であったが、新型コロナウイルスの世界的感染拡大の影響で、中止を余儀なくされた。よって、その旅費は次年度、新型コロナウイルスが収束した際に、使用する計画である。
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