本研究では、明治の洋楽黎明期から昭和初期までの東北地方における洋楽受容と関連する唱歌教育普及過程の史料を収集し、データベースを構築することを目的とした。具体的には、下記の三つの取り組みを通して、地域の音楽文化遺産の継承と地域の音楽素材に着目した研究と実践の充実に資することを目指した。 ⅰ)明治の洋楽黎明期から昭和初期までの東北地方における洋楽受容と唱歌教育普及過程の史料ライブラリの設置、ⅱ)上記を活用した研究者及び社会教育・学校教育への資料提供、ⅲ)ライブラリの資料を活用した教材開発と大学等における授業実践。 2021年度は研究の11段階中、【Ⅷライブラリ資料を活用した教材開発、データベースの補完とライブラリの改善】、【Ⅸライブラリ資料を活用した授業実践や社会人向け講座の実施】、【Ⅹまとめの成果発表(学会等)】に取り組んだ。それらのうち、各自治体所有の唱歌教育関連資料、公文書等の情報について一覧を作成した。史料の収集については一定程度の成果が得られたものの、今後も継続して取り組んでいく必要がある。また、研究成果の一部として報告した【データベース基礎資料Ⅰ:単行本、論文】 では、東北の唱歌教育に関わる単行本、論文等についての資料を整理、報告した。【データベース基礎資料Ⅱ:各県公文書】 では、秋田県及び宮城県の唱歌教育及び関連する諸施策に関わる文書を調査し、一覧を作成した。 これらの調査を通して、東北地方の洋楽受容及び唱歌教育研究については、今後の研究の充実と発展が待たれる状況にあることが一層強く認識された。本研究の成果がその課題解決に資することができるよう、今後も継続的に取り組んでいきたい。
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