令和3年度は以下の二つの研究を進めた。第一に包括的な食品ロス学習の構想、第二に研究成果の発信である。 まず、包括的な食品ロス学習の構想は、学校教育における食品ロス学習の体系化である。これまでの本研究の知見を基に、全校種(小学校・中学校・高等学校)全教科の食品ロスにつながる学習内容を調査し、既習事項を活かし食品ロスに関する知識・技能を構造化し、食品ロス削減の「意識」と「行動」を促進させる食品ロス学習のクロスカリキュラムを作成した。また、食品ロスを視点として、地産地消、フェアトレード、食文化伝承の課題を題材とした消費者市民の視点を育むプログラムを作成した。 次に、最終年度である本年は研究成果の発信を実施した。具体的には、学術会議での発表、児童・生徒・市民向けの講座および教員研修である。まず、学術会議は、日本家庭科教育学会第64回大会(7月)「シンポジウム家庭科温故知新:SDGsを通して考える未来につなぐ家庭科教育」に招待講演、日本調理科学会(9月)および日本消費者教育学会(10月)において報告をした。また、日本調理科学会誌、日本消費者教育学会誌、茨城大学教育実践センター研究紀要に論文投稿し、掲載に至った。児童・生徒・市民向けの講座は、令和元年度に実証的エビデンスを基に明らかにした家庭内の食品ロス削減の「意識」と「行動」の両方に着目した食品ロス削減行動要因について、福島県(7月)、茨城県3校(11月)、市民講座(5月、10月、11月)を実施した。また、教員研修は令和2年度に作成した「家庭内食品ロス削減行動を促す問題解決型調理実習プログラム」を基に、茨城県(1月)、福島県(8月)で実施した。 そして、本研究で得られた知見を活かし、茨城県エコレシピコンテストの講評、茨城県エシカル消費啓発事業の監修、茨城新聞(6月1日付)の食品ロス特集の執筆など社会実装に取り組んだ。
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