本研究は、学習者の読図過程に用いる念頭操作内容を捉えるための算数・数学的な読図問題を作成することを目的としている。これは、学習者が空間図形の表現された図を読む過程(読図過程)の不明瞭さと、授業者の空間図形の図表現や表現された図の扱い方の不明瞭さが互いに絡み合っているのではないかという点に着目したことが背景にある。作成する読図問題の特徴は、解答者の思考過程が映像的イメージ操作または言語的操作のどちらの活動が主となっているか言及することにある。 本研究の流れは、読図問題の作成、その問題を用いた調査の実施、そして調査結果をまとめ分析することを通して、作成した読図問題が学習者の読図過程に用いる念頭操作内容を捉えるための算数・数学的な読図問題となっているかについての検討である。問題については、過去に実施してきた図表現学習を教材とした授業実験を伴った調査結果や,空間認識力を測るために広く他の分野でも用いられている客観的指標による先行研究を基とし、読図と組み合わせて位置づけている図表現との関連について、数理認識という観点から考察し作成を行った。実際に問題は、立方体の図表示の違いを意図的に取り入れたものであり、対象は中学生としている。この作成した問題を、中学生1~3年生(388名)を対象に実施した。これにより、作成した問題が読図問題として実施可能であることを確認し、また成果として、一つの空間図形を表現した図の「見え方」が、その空間図形の問題解決の結果に影響を与えることを捉えることができた。最終年度となる今年度は,実施した調査をまとめた結果に対し、さらなる分析を行なった。分析は、調査問題用紙に記載されたメモ書きと解答結果、学年齢に見られるメモ書きの特徴など様々な視点により進めた。そして、さらなる考察を行い、その内容を成果として論文としてまとめることができた。
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