研究課題/領域番号 |
19K02783
|
研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
松本 伸示 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (70165893)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 教職大学院 / 学修の成果としての報告書 / 理科教育学研究 / テキストマイニング / 質的データ分析 |
研究実績の概要 |
本研究は、教職大学院における教科教育学的研究の実態を明らかにし,同大学院に提出される学修の成果としての報告書が従来の修士課程における修士論文を補完し、さらに発展して教科教育学研究となり得る潜在的な可能性を探るものである。特に、申請者が専門とする理科教育分野 での動向に焦点化する。申請者は、これまでに先発して設置された教職大学院について,教科教育学的視点からテキストマイニング法等を用いて構造分析を行ってきた。本研究では、これまでの成果を踏まえつつ、近年,教科内容学的要素も取り入れて設置が進む同大学院について,教科内容面も視野に入れた質的データ分析法等も用いて,さらに踏み込んだ分析を行う。 1年目には、教職大学院の設置当初から開設されている教職大学院で作成され、既に収集している1341件の報告書から理科分野のものを抽出するとともに、フィンランド・ヘルシンキ大学、ユヴァスキュラ大学の修士論文についても理科分野のものを再度抽出し、理科教育学研究の基準となる枠組みで分析し、理科教育学の視点で、それらの特徴と課題を明らかにした。報告書の 閲覧・収集については、多くの大学で教職大学院事務室、あるいは図書館で閲覧・コピーが可能であることが分かっている。それが難しい場合 は、各大学の協力者から情報を得ることにした。これらの報告書や修士論文に対してテキストマイニング分析に加え、それを取り巻く条件をQD Aソフト(質的データ分析ソフト)を用いて、多角的に分析し、現時点での報告書のプロトタイプを抽出した。ただし、当該年度に報告書が提出される2月から3月にかけて、新型コロナの感染拡大で、当初、計画していた全ての大学に出張することができなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度の報告書について北 海道、東北、北陸、甲信越、東海地区の教職大学院に出張して資料や報告書そのものを収集する予定にしていた。しかし、新型コロナの感染拡大によって出張ができなくなり、インターネットによる資料収集だけになってしまった。特に、東京学芸大学については、教職大学院の改組が行われていることから1年目の動向を現地調査できなかったことは大きなマイナスとなった。 また、フィンランドにおいても情報収集が進んでいない。渡航制限の動向にもよるが、現状できる範囲でWEBベースで情報収集している。
|
今後の研究の推進方策 |
2年目には、1年目に現地調査できなかったデータを補うとともに、既存のデータの分析のまとめを行い、暫定的ではあるが教職大学院における理科教育学研究のプロトタイプを作成する。これまでに抽出した教職大学院における研究の基本構造には教科を対象としない研究の要素も含まれていることから、今回の分析により理科教育に特化した基本構造が抽出できる可能性がある。さらに、今年度も近畿、中国、四国、九州地区の教職大学院の最新の報告書を収集 し分析する。また、2015年より現在教育改革が進行中のフィンランドの修士論文を現地調査する。今年度収集できた日本の報告書については、 1年目のプロトタイプと比較しながら、黎明期の教職大学院と後発の同大学院との比較分析も併せて行う。加えてフィンランドのそれぞれの教 員養成における理科教育学研究の特徴を明らかにする。 最終年にあたる3年目には、前年度までの研究成果を総括する。平成31年を区切りとして同大学院は大きく変わることが予想さ れる。3年間の研究成果から教職大学院の変容を浮き彫りにできるのではないかと考える。教科教育や教科内容が導入される教職大学院の教科 教育学研究としての潜在的な可能性を明らかにしていく。加えて、これらの動向がフィンランドでの教科教育的な研究の動向とどのような類似 性や相異性があるのかを明らかにする。また、現在、大きな変革を迎える日本の教職大学院の教科教育学的研究の足跡として実態を明らかにす るとともに、教職大学院修了生がさらに教職大学院の教員となるための礎としたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
計画では、1月から3月にかけて各教職大学院に出張し、当該年度の研究報告会の資料や報告書を収集することになっていた。しかし、新型コロナの感染拡大で出張が出来なくなった。そのために出張費やそれに伴う経費が残ってしまった。 資料集できなかった教職大学院の資料については、概ねインターネットを用いて収集を行なったが、2020年度は出張の制限がなくなるのを待って、それらの大学院についても資料収集を行う予定である。
|