研究課題/領域番号 |
19K02783
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研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
松本 伸示 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (70165893)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 教職大学院 / 学修の成果としての報告書 / 理科教育学研究 / テキストマイニング / 質的データ分析 |
研究実績の概要 |
本研究は、教職大学院における教科教育学的研究の実態を明らかにし,同大学院に提出される学修の成果としての報告書が従来の修士課程における修士論文を補完し、さらに発展して教科教育学研究となり得る潜在的な可能性を探るものである。 これまでに、全国の教職大学院における理科教育関係者の所属状況や大学院生の研究動向について調査を行った。ただし、コロナの感染が拡大して実地調査を行うことができなかった。そこで、各大学院が公表しているサイトやインターネットによる調査を行った。 ここ数年の間に、全国の教職大学院では学内改組が行われ、修士課程の教科教育学コースを教職大学院に移行している。このような状況のなかで、理科教育関係者が10人以上所属する教職大学院は、横浜国立大学をはじめ旧新構想大学院を含め全国に6大学院となった。4人以上の教職大学院は13大学院となっている。これは1年目の調査時の8大学院を大きく上回る。教科内容の教職大学院への導入が進んでいる実態が明らかになった。ただし、これらの大学院の学修の成果としての報告書の多くは令和3年度の提出が予定されている。来年の2月まで待たなければならない。現在、改組後初の報告書が今年2月に提出された東京学芸大学(14件)と兵庫教育大学(3件)の報告書について分析を行っている。 フィンランドの修士論文については海外渡航が出来ない現状にあり、インターネットによる検索を中心に進めている。なお、これまでに収集した修士論文についてはプロトタイプを抽出した。このプロトタイプの比較では、日本の報告者が「授業」をキーワードとしているのに対して、フィンランドでは「教師」が抽出されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍において、全国の教職大学院の成果発表がオンライン化されたり、縮小されてしまった。そもそも教職大学院がもっとも特徴としている理論と実践の往還を踏まえた研究実習が、コロナの感染拡大の防止のために制限されることがあった。そのため、学修の成果としての報告書の作成にも影響がでていた。また、各大学への現地調査が緊急事態宣言の発出により、できない状態が続いている。学修の成果としての報告書は修士論文と同じ扱いをする大学が多く、インターネットでの閲覧はむずかしい現状がある。そのためデータの収集に支障が起きている。ただ、各教職大学院の理科教育関係者からは、今年度の様子については情報を収集することが出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度には、これまでコロナ禍で遅れている研究を取り戻していきたい。特に令和3年度は多くの教職大学院において、改組後初の学修の成果としての報告書が提出される予定である。前年度までの研究成果を整理し、平成31年を区切りとして大きく変わった教職大学院の報告書の分析から教職大学院の変容を浮き彫りにしていきたい。 特に、教科教育や教科内容が導入される教職大学院の教科教育学研究としての潜在的な可能性を明らかにしていく。加えて、これらの動向がフィンランドでの教科教育的な研究の動向とどのような類似性や相異性があるのかを明らかにする。また、現在、大きな変革を迎える日本の教職大学院の教科教育学的研究の足跡として実態を明らかにするとともに、教職大学院修了生がさらに教職大学院の教員となるための礎としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のために、令和元年2月から令和2年にかけて計画していたフィンランドも含めた現地調査が全て延期になってしまった。そのために、旅費と通訳謝金等の経費が全く未使用となってしまった。今年度はコロナ感染の状況にもよるが、これらの繰り越し経費を使用して、これまで延期となっている実地調査を再開する予定である。 また、調査データが収集できた段階でアルバイト謝金等についても必要となってくる。対象とするデータについては、来年の2月に公表される予定であるので、それまでの期間に基礎的なデータを整理する予定である。
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