研究課題/領域番号 |
19K02783
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研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
松本 伸示 兵庫教育大学, その他部局等, 名誉教授 (70165893)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 教職大学院 / 学修の成果としての報告書 / 理科教育学研究 / テキストマイニング / 質的データ分析 |
研究実績の概要 |
本研究は、教職大学院における教科教育学的な研究の実態を明らかにし、同大学院に提出される学修の成果としての報告書が従来の修士課程における修士論文を補完し、さらに発展して教科教育学研究となり得る潜在的な可能性を探るものである。今年度も全国の教職大学院における理科教育関係者の所属状況や大学院生の研究動向を学会発表等で調査してきた。 これまでの調査から平成31年度に修士課程の教科教育学コースを教職大学院に移行し、理科教育関係者が10人以上所属し、かつ定員が50人を超える教職大学院は、東京学芸大学、兵庫教育大学など(令和4年1月時点)8大学院が確認される。その中で、東京学芸大学、兵庫教育大学の2つの大学院からはすでに学修の成果としての報告者が2年分提出されている。 現在、東京学芸大学と兵庫教育大学の報告書については入手して分析を行っている。全国的にみれば教職大学院において理科教育学的な報告書が提出される割合は多くない。しかし、この2つの教職大学院は修士課程の自然コースが教職大学院に移行したことにより、他の教職大学院よりも多くの報告書が提出されている。この2年間で2つの大学だけで47件の報告書が提出されている。テキストマイニングの分析結果、これらの報告書から重要キーワード上位10個の中に「教材化」「中学校」「実験」「高等学校」など従来の報告書では上位にあがってこなかった「ワード」が確認された。また、マッピングからは「実践」「教材化」「開発」「実験」などをキーワードとした有意味な構造が浮き彫りとなった。ただ、あくまでもこの結果は前述した2つの教職大学院の報告書に限られる。 今年度も昨年度同様にコロナ禍で、ほとんどの大学院の学修の成果の発表会に直接参加することは出来なかった。現在、インターネットによって閲覧できる大学院の報告書も加えて分析を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度同様、コロナ禍において全国の教職大学院の成果発表会がオンライン化されたり、縮小されてしまった。加えて、県外者の同発表会への参加が制限され、2月から3月に行われた成果発表会に直接参加して面接調査や資料収集を行うことが難しかった。また、学修の成果としての報告書は、修士論に準ずる取り扱いがされている大学もあり、図書館からの持ち出しができない場合もあった。このように成果発表会に直接参加できないことは研究の推進に大きな障害となってしまった。さらに、海外への現調査はまったくできなかった。 ただし、各教職大学院の理科教育関係者からは、昨年度同様に成果報告書の情報を得ている。また、1年間の研究延長を行ったことで、上越教育大学や横浜国立大学など、大学院改組による理科教育関係者の増加があった教職大学院の成果報告書が令和4年度に提出される。これらも分析対象にしていくことができるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度には、これまでコロナ禍で遅れている計画を前進させ、研究成果をまとめていく。まずは、新型コロナの感染状況にもよるが、これまで延期していた各教職大学院の現地調査を実施する。特に、令和3年度以降に大学院改組により理科教育関係者が増えた教職大学院等では、初めて学修の成果としての報告書が提出される。これらも含めて、平成31年を区切りとして教員組織が大きく変わってきた教職大学院にどのような学修成果としての報告書が提出されるのか、その実態と変容を浮き彫りにしていく。 近年、教職大学院は教科内容が導入され教科教育の役割が変化てきている。これら教職大学院における教科教育学研究としての潜在的な可能性を明かにしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で現地調査や出張が不可能になったことと、資料の整理のためにアルバイトを雇うことができなかったために、それらの経費がかからなかった。令和4年度はコロナの感染状況にもよるが今年度実現できなかった現地調査を行い研究を遂行していく。
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