研究課題/領域番号 |
19K02784
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
蜂谷 昌之 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (60510542)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 図画教育史 / 児童画 / 図画教科書 / 画題 / 教育実践史 / 大正期 |
研究実績の概要 |
令和4年度は、前年度の調査結果を踏まえ、博労小学校所蔵作品のうち大正期に制作された尋常科児童図画作品の調査を実施した。大正期には山本鼎による児童自由画運動があり、博労小学校の図画作品にもその影響がみられ、大正期半ば以降の卒業記念画には風景画が多く、それ以前の作品には臨画が多くあることを確認している。これまでの大正期の作品に関する調査においては自由画運動の影響を確認したが、児童作品と図画教科書掲載図版との照合は行っておらず、今年度の調査で教科書及び児童作品の調査を行い、作品制作において使用された教科書や画題の特定を行った。 その結果、当時の児童が明治期に発行された国定教科書のほか、国定教科書発行前に出版されていた小学校用の図画教科書、明治、大正期に発行された中等学校用の図画教科書を参考にしたとみられる作品を残していたことがわかった。特定した画題から、臨画とみられる作品には花や鳥、魚、生活道具、野菜、風景などが含まれていることを確認した。また、卒業記念画の中には、教科書に掲載されていたモノクロの絵を臨画し児童が彩色を施したものや、他の図版を組み合わせた作品を確認することができた。画題の特定から、大正期の国定教科書時代において、明治期の小学校用図画教科書や、中学校及び高等女学校用図画教科書を参考に多様なテーマの作品が制作されていたことが明らかとなった。当時、専科指導が行われていた同校図画教育において、多様な資料を活用した指導がなされていたことが推察される。調査を通じて、当時の図画教育や児童の図画表現における教科書の使用実態を把握することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は博労校所蔵作品のうち、大正期に制作された尋常科児童による卒業記念画の調査を行った。大正期の作品には臨画とみられる作品が多くあり、明治期から大正期に発行されていた小学校及び中等学校用図画教科書との照合から、臨画とみられる作品の画題を特定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
大正期、とりわけ自由画運動までの小学校における図画教育は、明治期に発行された国定教科書を使用した教育実践が行われていたという理解があると思われるが、大正期に制作された博労校所蔵作品には国定教科書発行前に出版されていた小学校用の図画教科書および明治、大正期の中等学校用図画教科書の掲載図版を臨画したとみられる作品が含まれていることがわかった。当時の作品制作において多様な資料を活用していたことが推察される。このことが博労校独自の教育実践であったのか、平米校の作品分析を通して確認する必要があると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度は、博労、平米両校の卒業記念画及び図画教科書の調査を進めた。新型コロナウイルス感染症の影響により、学校における調査などが当初の計画通りに進めることができなかったため次年度使用が生じた。 今後の使用計画では、調査のための物品購入や調査や研究協力者との打合せのための旅費、資料整理の謝金等に使用する予定である。
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