研究課題/領域番号 |
19K02785
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
関口 靖広 山口大学, 教育学部, 教授 (40236089)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ヘルプ・シーキング / 援助要請 / 協働的学習 |
研究実績の概要 |
2019年度に収集したデータを質的に分析した.ヘルプ・シーキングの研究を切り開いたNelson-Le Gallは援助要請の5段階プロセスモデルを提案している:[1] 援助の必要性を意識する,[2] 援助を要請することを決める,[3] 誰に援助を要請するか決める,[4] 実際に他者に援助を要請する,[5] 援助要請への他者からの反応を評価する.このモデルは,学習者の認知過程に視点をおいており,学習者がその都度明確で合理的な意思決定をしながら,自ら援助要請を行うと前提しているように見える.ところが実際の協働学習場面においては,グループのメンバーがお互いに課題とそれについての考えを共有しているため,学習者が明示的な形(質問文)で援助要請しないことが多く,さらに,援助を必要とする事柄や援助者も学習者の認知的判断だけでなく,お互いの社会的相互行為の中で決まってくる場合が多く,援助要請と援助提供は因果的ではなく相互構成的になっていることが明らかになった. ヘルプ・シーキングの研究では,ある学習場面においてどんな種類の援助要請がどのような頻度で現れるかを調べたものが多く,一つの学習場面における援助要請同士の関係に焦点を当てたものは少ない.しかし,協働学習の場面においては,グループメンバーが同じ課題に取り組んで交流しているので,現れる援助要請の間にも密接な関連が見られた.数学科の協働学習におけるヘルプ・シーキングについては,援助要請が連鎖的,継続的,または同時的に生じたりする複雑な様相を呈することが明らかになった. 以上の知見については,2020年11月14-15日開催の日本数学教育学会秋期研究大会にて口頭発表を行なった.また,エンゲストロームの活動システム理論にもとづいて数学科協働学習を考察する理論的論文を海外の学術誌に投稿し,現在審査中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度には,1学期と2学期において,それぞれ2019年度と同様に間隔をおいて授業をビデオ収録し,どのような援助要請がなされているかそのタイプ,頻度,変化,およびその背景について質的研究法を用いて分析する予定であった.しかしながら,2020年4月以降,新型コロナウィルス感染症の感染拡大により,データ収集予定の中学校において通常の授業を実施できない状況が続き,さらに,授業を実施する場合でも,生徒同士の間隔を離して学習するため,協働学習が機能しにくい状況であった.そのため,2020年度のデータ収集は中止し,2021年度にデータ収集延期することにした.
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今後の研究の推進方策 |
予定していたデータ収集を2021年度に実施する予定である.2020年度にデータ収集に協力を予定していた中学校数学科教員が別の中学校に異動になったので,それに合わせて,データ収集の対象となる中学校をその教員のいる学校に変更する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年4月以降,新型コロナウィルス感染症の感染拡大により,データ収集予定の中学校において通常の授業を実施できない状況が続き,さらに,授業を実施する場合でも,生徒同士の間隔を離して学習するため,協働学習が機能しにくい状況であった.そのため,2020年度のデータ収集は中止し,2019年度に収集したデータの分析に変更した.さらに,発表予定の学会がオンライン開催となり,旅費が不要になった.以上により,経費の使用がなかった. 2021年度には,昨年度予定していたデータ収集を実施する予定である.再開されるデータ収集と分析のために昨年度分の経費を利用する.
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