本研究は,学校現場における消費者教育のさらなる充実を目的に,生活や地域の課題を理科学習に組み込み,それらの課題を科学的に思考するプログラムを開発する。 最終年度は,昨年度調査した製品評価技術基盤機構の事故事例をもとに,電気製品の使用に関する意識・知識について高校生を対象に調査を行った。使用時の意識は,定格表示やトラッキング現象,アース線について低かった。一方,知識については,電力量や電流値の計算,断線と抵抗値の関係,抵抗値と発熱に関する正答率が低かった。なお,定格表示に対する意識と電力量及び電流値の正答率に関し,意識と知識の関連性が見られた。学習指導要領では科学知識と日常生活や社会との関連を重視しており,製品事故事例やその発生原因と科学知識がつながるような教材が必要である。 前年度開発した高レベル放射性廃棄物の地層処分問題をテーマにした討論型ゲーム教材は,ゲームを体験することで,課題に対する興味・関心が高まり,自分ごととして考える態度の育成に有効であることが明らかになった。そこで,より生徒にとって身近な地域(島)のエネルギーをテーマとした討論型教材を開発した。エネルギーはあらゆる生活や産業を支える基盤であるとともに,SDGsでも注目されている世界的なテーマであり,消費者として適切な判断力や行動力が必要である。新型コロナウイルス感染症の影響で,学校現場での実践・検証はできなかったが,大学生を対象に実践したところ,エネルギー問題に関する興味・関心が高まったとともに,再生可能エネルギーの現実的な課題の認識や,科学的な根拠に基づいて意思決定できるような力,異なる考え方を持った人々と協働すること,対立やジレンマを克服する力を育成する教材として有効であると考えられた。今後,学校現場での実践を通してさらに検証を進めたい。
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