研究課題/領域番号 |
19K02790
|
研究機関 | 郡山女子大学 |
研究代表者 |
山本 裕詞 郡山女子大学, 家政学部, 教授 (40550702)
|
研究分担者 |
佐久間 邦友 日本大学, 文理学部, 助教 (30761209)
佐藤 愛未 郡山女子大学短期大学部, その他部局等, 講師 (30822390)
伊藤 哲章 郡山女子大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (50735256)
田中 真秀 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (50781530)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 校務掌理権 / 専門職性 / 学校ガバナンス / スクールソーシャルワーカー / スクールロイヤー / 教育政策 / チームとしての学校 / 地方自治体 |
研究実績の概要 |
以下の合計4点の成果があった。研究論文1.山本裕詞「児童生徒の法的地位論から見えるSSWerの活動可能性」日本学校ソーシャルワーク学会東北ブロック『東北の学校ソーシャルワーク第8号』2019年7月、2~7頁。研究論文2.山本裕詞「『チームとしての学校』における校長権限の特徴‐多様な専門職の導入に注目して‐」『桐生大学教職課程年報 第3号』2020年3月、16~27頁。研究論文3.佐久間邦友「地方自治体の教育政策動向」日本教育政策学会『日本教育政策学会年報第27号』2020年(印刷中)、210‐217頁。研究ノート1.山本裕詞「『学校法』へのスクールロイヤー導入の意義と可能性」『郡山女子大学研究紀要第56集』2020年3月、81~90頁。 研究論文1は、スクールソーシャルワーカーの学校法制への導入の意義を、児童生徒の法的地位論である「学校部分社会論」に位置付けて考察し、児童生徒の個々の権利や親の教育権の実現に向けた活動可能性が今まで以上に広がっていることを論証した。研究論文2は、多様な専門職が学校内部に導入されてくる現象を、校長の校務掌理権との関係で考察し、後者の実質的相対化が進むことになることを論証した。研究ノート1は、上記2点の論文で指摘した現象が、高い専門職性と自律性を有するスクールロイヤーの導入によって、より強調されることが、弁護士の専門職性とそこへの社会的期待の大きさから予測されることを指摘し、結果として校長を頂点としたピラミッド型学校ガバナンスは相対化し(すなわち校長権限を強化する教育政策の動向は終了し)、専門職集団と児童生徒及び保護者、さらには地域関係者等加わる複合的ガバナンスが模索される環境が生まれていることを示唆した。研究論文3は、近年の地方自治体の教育政策動向を概観したもので、地方レベルの教育政策終了動向を分析をするにあたっての基礎資料となるものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中央レベル教育政策の動向の中では、スクールソーシャルワーカーの導入、「チームとしての学校の」における校長権限の在り方、スクールロイヤーの学校法体系への導入論について考察を進め、こちらは、それぞれ研究論文や研究ノート等として発表成果にまとめることができた。特に、研究成果のいずれもが、学校ガバナンスにおける校長による校務掌理権の実質的相対化を後押しする現象であることが判明したことは、校長権限の強化に向けた一連の教育政策の終了につながる可能性を示唆しており、当初予定計画を超えた研究成果となった。 一方で、「学力向上アクションプラン」、「学校選択制」、「教員の働き方改革」、「学校におけるLGBTへの対応」、「総合的な学習の時間に関する動向」等については、予定通り資料を進めることができ、一部は論文執筆中及び、学会誌への投稿中である。なお、地方政策レベルでの比較研究は一部に止まっているものの、地方自治体における近年の教育政策動向については、まとめることができた。以上は、当初予定通りの進展状況である。 最後に、政策終了のエンドマークを見極めるべく実施されている歴史的教育政策の分析については、会津藩や上総国大多喜藩等、数点の事例を中心とした資料収集を進めているが、訪問調査を抑制した影響が大きく、結果として、若干の遅れがみられる。 以上から、総じて「おおむね順調に進展している」とした。 なお、各研究で2020年3月に予定していた訪問調査については、新型コロナウィルス感染予防の観点から、政府専門会議による不要不急の外出抑制の呼びかけに応じ、これを抑制することとした。
|
今後の研究の推進方策 |
多様な専門職が学校へと導入される現象は、今後、それぞれの専門職性を裏書している諸省庁レベルの専門職観が、学校現場において協働的に機能する道を模索することが予想されるし、これまで文部科学省の管轄域であった教育政策全体に、他省庁の権限が関与する契機となる可能性がある。すなわち、地方レベルの教育政策終了を導くと予想される中央レベルの政策動向メカニズムについては、文科省以外の省庁による教育政策へのアプローチも視野に入れる必要が自覚されてきた。そこで、当初研究予定の延長線上に、総務省行政評価局による勧告の影響を対象に加える予定である。なお、新型コロナウィルスへの対策等、突発的現象が地方教育政策に与える影響についても自治体間比較を進める予定である。 また、予定通り資料収集が進んでいる研究諸項目については、収集した資料の分析に研究の重心を移行し、本年度中に、メンバー個々の研究成果の中間とりまとめを図り、来年度予定している政策間に共通する政策終了メカニズムの抽出に向けての見通しをつけたい。 なお、近代から現代までを歴史的に俯瞰して、教育政策史的観点から政策終了のエンドマークを見極めようとする構想については、新型コロナウィルス感染予防の見地から訪問調査の範囲を限定し、同時に研究期間の終了期を念頭に置き、いくつかの事例研究を根拠にした作業仮説の提示を目指すことで、具体的な研究成果につなげていきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月に予定していた教育委員会等地方教育行政関係者への取材活動、学校訪問計画、さらには藩校調査計画が、新型コロナウィルスの感染拡大時期と重なり、不要不急の外出抑制をよびかける政府専門家会議の方針を踏まえ、研究メンバーの内、山本、佐久間、佐藤の3名による訪問調査を控えたことによって、次年度使用額が発生した。今後、感染状況の落ち着きを待って計画を再開する予定ではあるが、初年度研究の成果により明らかになった新事実もあり、それによって新たに自覚された理論研究面の必要にも対応したいので、既存の計画については遠隔調査への切り替え等の合理化も交え、新たに自覚されてきた予算の必要に対しても柔軟に対応していくことで、当初研究目的の達成を目指し、さらなる研究活動の充実を図っていく。
|