• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実施状況報告書

全ての個の育ちを保障するための教師の遊び指導力向上プログラムの開発

研究課題

研究課題/領域番号 19K02794
研究機関東京都市大学

研究代表者

岩田 遵子  東京都市大学, 人間科学部, 教授 (80269521)

研究分担者 吉田 龍宏  名古屋学院大学, スポーツ健康学部, 准教授 (70369578)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード小川博久 / 遊び保育論 / 俯瞰するまなざし / 個別関与
研究実績の概要

小川博久(本研究元協力者)の「遊び保育論」は、施設集団保育において教師が制度上抱える2つの困難(対象の複数性、行為の同時並行性)を軽減し、クラスの全ての子ども一人一人の遊び行動を適切に見取り援助するための方法論提起してきた。本研究は、就学前施設におけるアクションリサーチによって、新人教師が「遊び保育論」を実践する場合に遭遇する課題(子どもの集団形成力の弱体化、教師の幼児に対する個別的・言語的関与傾向)を克服し、遊びに対する指導力を獲得する過程を解明することを目的としている。
昨年度はクラスの子どもたちの遊びの読み取り方を、新人保育者と「遊び保育」に習熟しているベテラン保育者の違いを明らかにした。ベテラン保育者はクラスのほぼ全員について、どこでどのようにして遊んでいたかを読み取っていたのに対して、新人保育者はクラスの数人の子どもしか把握できておらず、それは全体を俯瞰するまなざしの有無によっていることを明らかにした。
今年度は、俯瞰するまなざしがいかにして確立されるかを分析ソフト(DartfishPro)を用いて明らかにした。俯瞰するまなざしは、単に俯瞰しようという意識があることによって可能となるのではなく、保育者の子どもへの関与のあり方が俯瞰するまなざしの成立に関わっていることが明らかとなった。個別関与を続けると、子どもたちに潜在している保育者との個別関与への要求が顕在化し、保育者の周囲に集まってしまう。その結果保育者はその対応に追われて、順番に個別関与を続けざるを得なくなる。つまり、個別関与はさらなる個別関与の連鎖を生み出すことになり、俯瞰するまなざしの確立を妨げる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

新型コロナ感染拡大により、特に昨年度前半は移動が制限されたと同時に、感染収束の見通しが立たなかったので、予定していたようにフィールド対象園に出向くことはかなわなかった。また、保育者が保育実践中もマスクを着用していなければならないため、ウェアラブルカメラの着用を不快に感じることから、ウェアラブルカメラの着用は困難だった。そのため、視線追跡調査の実施は困難だった。

今後の研究の推進方策

昨年度よりも感染対策についても理解できているので、フィールド調査、及びアクションリサーチは可能と思われる。具体的な推進方策は下記の通りである。
1)俯瞰する眼差しの確率を妨げる状況を回避する方略はどのようなものかを、ベテラン保育者の記録動画(保育実践全体の俯瞰記録画像と視線追跡動画記録)から明らかにする。
2)なおウェアラブルカメラの動画記録は、カメラの着用の仕方等によって視線を正確に追うことには限界があることが判明したので、視線追跡カメラを新たに購入して視線追跡に用いる。これにより、保育者の視線をより正確に追跡できると思われる。
3)感染拡大状況にもよるが、園内研修(アクションリサーチ)を各学期1回実施し、同時にベテラン保育者と新人保育者の保育実践と視線をビデオカメラ によって記録する。
4)3)で採取された動画データを2)の視線追跡カメラと分析ソフト(DartfishPro)を用いて、比較分析し、1)を明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

コロナ感染拡大によって、フィールド対象園に出向くことが予定通りには行かなかったため計画を変更せざるをえなかった。また、データ採取にいくつかの不都合が生じ、予算内で新たな機器を購入することにしたので、次年度の予算額と合わせて計画を若干変更したため。

備考

小川博久・岩田遵子企画編集 吉田龍宏制作協力 DVD『遊び保育の実際』新宿スタジオ 2020年12月刊行

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] 「『遊び保育』実践において子どもの個の理解はどの様に行われるか─群れとして展開される遊びの読み取りによる媒介2021

    • 著者名/発表者名
      岩田遵子
    • 雑誌名

      東京都市大学人間科学部紀要

      巻: 第12号 ページ: 25~41

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 集団保育において全ての個の理解を可能にする条件は何か(1)─「遊び保育論」(小川博久)の重要性─2021

    • 著者名/発表者名
      吉田龍宏・岩田遵子・山田祥子・鈴木まり
    • 学会等名
      日本保育者養成教育学会第5回大会
  • [学会発表] 集団保育において全ての個の理解を可能にする条件は何か(2)─保育者の俯瞰する眼差しの意義2021

    • 著者名/発表者名
      岩田遵子・吉田龍宏・・山田祥子・鈴木まり
    • 学会等名
      日本保育者養成教育学会第5回大会
  • [学会発表] 片付け活動の援助の専門性とは何か─一斉的活動と自由遊びの連続性の視点から2020

    • 著者名/発表者名
      岩田遵子
    • 学会等名
      日本保育学会第73回大会
  • [学会発表] クラス活動における子どもの主体性はいかに確立されるか⑤2020

    • 著者名/発表者名
      吉田龍宏・岩田遵子・山田祥子・倉知早穂
    • 学会等名
      日本保育学会第73回大会

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi