研究課題/領域番号 |
19K02799
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研究機関 | 札幌国際大学 |
研究代表者 |
河本 洋一 札幌国際大学, 観光学部, 教授 (50389649)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ヒューマンビートボックス / 音づくり / 音楽づくり / オノマトペ / リズム遊び |
研究実績の概要 |
コロナ禍によって実証研究が遅れていた本研究は、2022年度になってようやく実証実践校が決まり、北海道の高等学校にて研究成果の確認のための模擬授業を実施することができた。具体的には、ヒューマンビートボックスの初心者でもリズムを気軽に体感できるように設計された「ビートボックストレーニングカード(ビートレカード)名称特許出願中)を使い、事前に高校の教員に使い方を説明した上で授業実践を実施してもらい、その効果を研究者が確認することによって研究成果を確認した。本研究では、当初オノマトペを使った実践を想定していたが、結果的にはオノマトペをさらに分解し一語だけにしたものや、カードへの表記を工夫し発音する音のニュアンスを感じさせるような工夫をすることで、生徒(学習者)の発音のイメージを膨らませることができることが確認できた。このビートレカートは、トランプのように表面が同じ柄で、裏面が「ボ」「プス」「チー」といった文字が様々な字体を用いて描かれており、これらのカードをランダムに並べることで、まるでカードゲームをするような感覚で偶発的なリズムを構築し、互いのリズムの違いを評価し合ったり、同じカードの並びであっても様々な音を発することが可能であることを確認し合ったりすることができることが授業実践の中で確認された。今後は、このカードを使った実証実践をさらに重ね、発達段階にあったカードの表記法の工夫や、立体的な文字の表現と発音される音の関係、また、音楽の授業に於けるアイスブレイクでの活用や、児童生徒か主体となった音作り・音楽作りへの積極的活用を視野に、さらに研究を重ねていくことにした。このテーマは時期の科研費研究基盤C『ヒューマンビートボックスとカリグラフィーの融合による芸術表現の可能性の実証的研究』(23K02488)へと引き継がれていくことになった。また、ビートレカードは商品化を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、ヒューマンビートボックスの初心者指導でオノマトペを用いることの有効性について検証することを目的としてきた。しかし、コロナ禍で最終段階の実証実践が遅れ、2020年度より研究が中断されていた。この遅延は2022年度になって解決し、1校のみではあるが実証実践協力校を確保することができた。協力校では、本研究の研究成果として具現化された「ビートボックストレーニングカード(ビートレカード)」を使用した授業を行うことができた。 このカードは、現在、特許庁に名称登録を出願中である。形状に関しては、現在はトランプのようなカードゲーム形態のみだが、今後は立体のサイコロ状の形状や空間全体をオノマトペで満たすようなインスタレーション的な方法も検討中である。 このような着想は、オノマトペがもっている音象徴に由来しており、それに形や色の変化を加えることで、発せられる音にも違いが生じることを確認することができた。また、このことは、音・色・形という聴覚と視覚が融合した表現の可能性に繋がることを示唆している。これまでは単にヒューマンビートボックスの初心者用の指導法としてオノマトペを活用することを主眼に研究を重ねてきたが、オノマトペの文字情報の提示の仕方が発音される音に影響を及ぼすという相関関係を明らかにすることで、新たな芸術表現の可能性を示せるのではないかと考えている。 以上の理由から、研究期間を2年延長したものの、遅延していた研究は当初の計画どおりの進捗状況にまで回復することができた。よって、本研究は最終段階を迎えており、今後はさらに実践協力校を確保することで、実証実践の制度を高め研究成果の有効性を確かめていくことに傾注したい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の成果として開発された「ビートレカード」を使った実証実践をさらに行い、その有効性を確かめていくことが、本研究の最後に残された課題である。すでに、このカードの有効性はある程度示唆されているが、協力校がまだ1校しかなく、より精度の高い研究成果を導くためには、さらに多くの協力校を確保し実践データを集積する必要がある。 また、集積されたデータに関して、現在示唆されている「オノマトペの音象徴とヒューマンビートボックスの関連性」、「オノマトペの文字の表現法(形状や色)と発音される音との相関性」といった事象があるのかどかの客観的な分析を行っていく必要がある。 もし、このような事象が客観的に認めることができるならば、ヒューマンビートボックスの初心者の教材というだけでなく、学校教育における音楽教育の新たなツールとしての活用が期待される。特に、音・音楽づくりという領域での活用が期待されると考えられることから、学会等を通じ積極的に実証実践校を募り、効果の信憑性を高めていきたい。 また、名称登録を出願中のビートレカードは、その効果が確認できた場合は査読論文として成果をまとめ、商品化へ向けた準備を始めたいと考えている。そして、近年学校教育に取り入れられたダンスと融合した授業の開発も視野に入れた、複合的な表現活動の一つのツールとして活用されることを期待して今後の研究を進めていきたいと考えている。 また、研究の延長後に採択された科研費基盤C『ヒューマンビートボックスとカリグラフィーの融合による芸術表現の可能性の実証的研究』(23K02488)と研究期間が1年間重なったため、この新たな研究テーマへのスムーズな接続も視野に入れながら、音象徴、文字、形状、音というキーワードを繋げて研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により実証実践校の協力が1校しか得られず、さらに研究年度を延長したため。
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