研究課題/領域番号 |
19K02805
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
牧野 智彦 宇都宮大学, 教育学部, 准教授 (10450157)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 未完成な証明 / ディスコースの拡張モード / 命題の認識値 / 命題のステータス |
研究実績の概要 |
2019年度は,未完成な証明の生成過程における中学生の「認識値」について分析し,研究発表を行った。未完成な証明を生成している生徒も,証明を完成させた生徒と比べると,真偽(論理値)を支える「必然性」(認識値)の種類が類似していることがわかった。一方で,両者では,命題の「ステータス」に関する認識値に違いがあり,未完成な証明を生成する生徒は限定的であった。証明を完成させている生徒の中にも,ある命題を証明に使うかどうかについて,必然性に基づかずに,確実性に基づいて判断する生徒がいることがわかった。証明を完成させている生徒でも,命題の「ステータス」に関する認識値に問題を抱えている生徒がいることが明らかになった。 未完成な証明を生成する生徒は,なぜ未完成な証明を受け入れるのか,その規準を調べるために,2019年11月~12月末にかけて,中学3年生145名を対象に筆記調査を実施し,26名の13ペアを抽出した。13ペアの生徒に対して,他者の証明を評価する調査,ペアへのインタビュー調査を実施した。なお,13ペアの中には,証明を完成させた生徒も含めていて,未完成な証明を生成した生徒と比較している。現在,データの集計,トランスクリプトの作成は終わり,分析に入っている。 最後に,2019年度は,国際数学教育会議(International Congress of Mathematics Education)の証明に関する研究グループ(Topic Study Group)に「ディスコースの拡張」のモードに関する研究論文を投稿した。査読結果として,招待論文(ロングプレゼンテーション)に選ばれた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Duvalによる命題の認識値の概念が難解であり,中々データの分析枠組みが定まらず,苦労した。しかし,今年度も引き続き,Duvalの文献をもとに,データの分析を続け,途中段階の結果を論文にまとめていったことで,命題の認識値についての理解が進み,分析の視点がクリアになってきた。 一方,ディスコースの拡張モードの切り替えに様相を捉えるために採用していた研究方法論に問題があり,うまく捉えきれていなかった。構造を捉えるための研究方法論について,他の研究者からの示唆を得て,現在,分析に取り掛かっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,2019年度に確立しつつある研究方法論に基づいて,未完成な証明が生成する「ディスコースの拡張」の様相をベースに,モードの切り替えに関わる「認識値」を探っていく。また,2021年度には指導モデルの開発に取り組むので,現職教員への調査を計画・実施しつつ,指導モデルを協働で開発するための協力体制を構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
データのテープ起こし,論文の英文校正について,計上した金額と,実際の金額の差額が発生しため。年明けでの業者への依頼のため差額分の埋め合わせができなかった。翌年度は差額分を考慮した予算執行を心掛けたい。
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