研究課題/領域番号 |
19K02807
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
時得 紀子 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (30242465)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 音楽授業 / 領域横断的 / 教員養成 |
研究実績の概要 |
コロナ禍を経て、海外の教育現場への現地調査に赴くことできたことは、大きな進展であった。昨年度は、アジア地域の中で、教科横断の優れた実践に取り組んでいる、シンガポールを訪れた。音楽科と他教科・領域が関わる実践校の情報を事前に現地の研究協力者から得て、小、中、高校、大学に赴き、調査を行った。 シンガポールでは長年にわたって現職教員の教員研修に力を注いでおり、ベテランから若手までが最新のテクノロジーを活用した授業づくりや、創造的な音楽表現活動についての指導法の修得の機会が保証されている。また、さまざまな文化的背景をもつ児童・生徒が、各自のルーツとなる文化を学べるようなカリキュラムが配慮されている。音楽と言語を関わらせた、横断的な音楽授業(例:中国の歌曲を学び、中国の言葉に親しむ活動)、あるいは地元シンガポールの会社による、音楽制作ソフト(BandLab)を使った協働的な創作活動も盛んである。いずれも、教員のオリジナリティーが反映され、自由裁量にゆだねられていた。現地調査で収集した、これらの多彩な実践事例を系統的に分類するとともに、質的な分析を加えた。 一方、日本国内の調査では、課題解決型の学習、協働的な学習と関わらせた、テクノロジーの活用による創作活動の実践などが展開されてきている。例えば、関西のある私立中学校では、「探究科」の時間にドイツの会社の音楽創作ソフト、Ableton Liveが活用され、グループによる創作に取り組み始めている。 今年度は、2つの国際学会において発信した。北京師範大学主催の教師教育学会 (2021年 オンライン開催) において研究成果の一部を発表していたが、このほど2編の発表論文が2022年3月に出版された。また、2022度7月開催のISME国際音楽教育学会豪州大会において、2つの口頭発表並びに2編の投稿論文が採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、海外の現地調査に赴くことができたことは、大きな進展であった。国際音楽教育学会 豪州オンライン大会で。テクノロジー部門の発表者らとの情報交換から、新しい音楽教育の動向である、音楽創作ソフトを活用した諸外国の実践に示唆を得た。また、これを契機に実際にシンガポールを訪れた。現地の小、中、高校、大学への参観を経て収集した豊富な授業映像、インタビュー、国家カリキュラムなどを資料として、多彩な実践を分類するとともに、現在まで順調に質的な分析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
国際比較の観点から、現地とのオンラインによる連携をはかりながらも、アジアへの実地調査の遂行にも努めた。今後も引き続き、現地調査に取り組んでいく計画である。 国内においても同様に、対面による授業実践の調査を速やかに推進して行きたい。 今年度は、国際音楽教育学会 アジア大会などが対面実施され、既に口頭発表が決定している。また、世界各国が注力する、STEAM教育などのワークショップにも積極的に参加し、本研究に活かしていくための情報収集も推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は海外現地調査について、コロナ禍の影響を受け、全て実施ができずに残額が生じた。その一方で、社会情勢を見ながら、アジアの一部地域を新たな調査研究の対象に含め、調査研究に取り組むことができた。これらの現地調査が加わることにより、次年度使用額の新たな追加が見込まれる。さらに、国内フィールド調査、情報収集のための各種セミナーへの参加費、旅費などが必要となるため、これらの残額を使用する。
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